2018 Fiscal Year Research-status Report
脳損傷者のfNIRSを用いたドライビングシミュレーター運転時の脳血流について
Project/Area Number |
18K10677
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
有馬 美智子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90404508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下堂薗 恵 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30325782)
衛藤 誠二 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (70295244)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドライビングシミュレーター / fNIRS / 脳卒中 / 脳損傷者 / 社会復帰 / 自動車運転 / 高次脳機能障害 / 前頭前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中や頭部外傷などの脳損傷者は、リハビリテーションによって歩行やADLが自立した後に、社会復帰に際して、自動車運転再会を希望することが多い。 運転には安全な運転技術も大切であるが、注意や遂行機能、記銘力などの高次脳機能も必要である。今回、特に注意を必要とする運転場面における脳活動を、ドライビングシミュレーターを運転しながら、より簡単に測定できるように、前頭葉のみに装着する機能的近赤外線(functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)を使用して、健常者と脳損傷者の脳血流を測定し、運転再開の脳活動を、健常者と比較することによって、脳損傷者において、自動車運転再開を許可する際の判断材料のひとつにしたいと考えた。 平成30年度は、既に当科で所有している前頭前野の脳活動を測定するためのfNIRS (Spectratech OEG-16)を、更に正確なデータが測定できるようにアップグレードし、信号対雑音比(SNR)の改善や、脳局所のヘモグロビン変化、みかけの動静脈酸素飽和度も測定可能となった。また、鹿児島大学病院の倫理委員会の承認も得た。さらにドライビングシミュレーターのソフトを購入して、直進だけでなく、右折時、左折時の場面や、右折、左折時に対向車や横断歩道を渡る人が出現する場面を、ランダムにそれぞれ6回ずつ繰り返し出現するようにプログラムを作成した。また、これらの場面に加えて、二重課題(質問に対する返答のためのボタンを押す)を行う場面を追加した場合のプログラムも作成した。最初は一画面でのドライビングシミュレーターを検討していたが、一画面では右折、左折時の見通しが悪く、困難であったため、三画面とした。また、右折時、左折時、質問時にfNIRSへトリガーが自動で入力されるように調整した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度までにドライビングシミュレーターのプログラムを作成終了し、平成31年度よりまず健常者の研究対象者を公募して、ドライビングシミュレーター操作時に、fNIRSを装着しながら脳血流を測定する予定であった。しかし、ドライビングシミュレーターのソフトで、直進時、右折時、左折時、横断歩道を渡る歩行者が出現する場面などをランダムに6回ずつ出現するように、ドライビングシミュレーターのソフトを作成した業者にプログラムを依頼したが、研究の目的通りのプログラムを作成してもらうために、何回も業者とのやり取りを重ねたため、思った以上に時間を要してしまった。また、機器の簡略化やシミュレーター酔いを軽減するため、最初は一画面でのドライビングシミュレーター作成を検討していたが、元々ドライビングシミュレーターのソフト自体が三画面用のソフトであったため、一画面では右折、左折時などの見通しがかなり悪く、操作が困難であったため、途中で三画面用に変更したため、パソコンやモニターの追加購入や、プログラムの修正などが更に必要になり、まだ研究対象者に対して課題を行える状態に至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ドライビングシミュレーターのプログラムの完成を出来るだけ早く目指している。プログラム完成次第、健常者の研究対象者を公募して、健常者がドライビングシミュレーター操作時に、どの場面でどの程度fNIRSにて前頭前野の脳血流の変化が見られるのかを確認したい。出来れば30名程度健常者での課題施行後に、データ解析を行い、健常者でのドライビングシミュレーター操作時の平均の脳血流の変化を数値化したい。 その後に脳卒中や脳損傷後に運転再開を希望している患者にて、鹿児島大学病院リハビリテーション科での、運転再開についてのスクリーニングテスト(MMSE、TMT、かな拾いテスト、コース立方体テスト)の基準を満たした患者で、健常者と同じプログラムでのドライビングシミュレーター操作時の脳血流を測定したい。出来れば30名程度患者での課題施行後に、データ解析を行い、健常者と比較したい。 更に最終的には、脳卒中や脳損傷後に運転再開を希望している患者に対して、より注意の必要な場面でのドライビングシミュレーター課題を行うことによって、前頭前野の脳血流が保たれているかを確認し、より安全に運転できることを運転再開許可の目安にしたい。
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Causes of Carryover |
当該年度中にドライビングシミュレーターのソフトを使用して、研究の目的に合ったプログラムを完成させてから、プログラムを作成依頼した業者に費用を支払う予定にしていた。思っていたよりプログラム作成に難航したため、当該年度中にプログラムを完成することが難しかったため、次年度使用額が生じてしまった。翌年度分として請求した助成金と合わせて費用で、ドライビングシミュレーターのプログラムを完成させるための業者への作業費や、三画面のドライビングシミュレーターに必要なパソコン、モニターの費用などに充てたい。更に研究を出来るだけ快適に行うために必要な物品購入に充てたり、より良い研究を行うための知識を習得したり、研究の成果を発表するため、学会参加の旅費に充てたい。
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