2019 Fiscal Year Research-status Report
細径マッキベン型空気圧人工筋肉を用いた前腕欠損児のための動力義手の開発
Project/Area Number |
18K10694
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷口 浩成 大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 准教授 (00508955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇元 修一 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40452560)
森永 浩介 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 助教 (40734760)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 前腕動力義手 / 小児 / ソフトアクチュエータ / 人工筋肉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度までの研究状況を踏まえて,小児用動力義手の改良を行い,義手の基本性能評価およびユーザ評価を実施した.義手の改良において,使用しているアクチュエータの構成とサイズを変更した.その結果,昨年度のアクチュエータと比較して約2倍の発生力を実現し,性能を向上させることができた.次に,義手に用いる装飾用グローブと義手モデルとの適合性を向上させるために,義手の指および掌の形状変更を行った.これにより,装飾用グローブと義手との間の余分な隙間がなくなり,動作の改善が確認できた.また,拇指の関節構造を修正することにより,関節の可動域を調整した.これらの改良により,直径40mmの円柱把持における義手の指先発生力は,昨年度試作した義手と比較して約4倍の発生力を実現した. 本年度に新たに改良し試作した義手の基本性能評価として,ボール,直方体,ドライバー(工具),カメラバックなどの物体把持実験を行った.その結果,様々な大きさおよび重量の物体に対して把持できることが確認された.ユーザ評価試験では,健常な20代の男性5名と,12歳と9歳の女児各1名ずつに対して,大阪工業大学ライフサイエンス実験倫理委員会の承認を得て(承認番号:2019-17)実施した.健常な上肢にハーネスを介して義手を取り付け,前腕部の筋電信号を取得し本年度試作した義手と昨年度試作した義手の2種類を操作してもらった.評価機器としてSHAPを使用し,物体移動に要する時間の測定を実施した.6種類の形状の物体それぞれに,金属製のものと木製のものがあり,形状に差異は無いが重量が異なる12種類の物体を移動させた.実験結果より,本年度試作した義手では,タスク全体の75%において昨年度試作した義手よりも優位性が認められた.しかし,女児を対象に試験を行う中で,義手本体の重量が重いという課題が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,2019年度の目標は,小児用動力義手の試作と基本特性評価,および前腕欠損児による義手の評価であった.義手の試作では,前年度の問題点を踏まえて改良を行い,性能の向上を達成した.また,SHAPによる動作評価試験を健常なユーザにより実施し,義手の完成度の確認と改善すべき点を明らかにした.しかしながら,前腕欠損児による義手の評価は実施できなかった.これは,義手の改良と健常なユーザによる評価に対して慎重かつ丁寧に進めたことが影響している.これらの内容から,おおむね順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,2019年度の研究結果に基づき,義手の改良を進め,広島国際大学森永浩介氏(研究分担者)の協力のもと,前腕欠損児の切断部に試作した動力義手を取り付けて,簡易上肢機能評価テストキットSTEFおよびSHAPによる動作評価試験を行う.STEF・SHAPは,各種ブロックのつまみ動作,移動作業により義手の機能を定量的に評価することができる. 次に,STEF・SHAPによる動作評価試験の結果を踏まえ,より実用に耐えうるための改良を施す.そして,日常生活を想定したモデルケースにおいて,動力義手の操作性や耐久性などを総合的に評価する.モデルケースとして,コップを掴んで飲む,ボールを掴んで投げる,机に義手をついて起き上がるなどを想定している.
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Causes of Carryover |
当初計画では,設備備品として上肢機能評価テストキット(SHAP)の予算を計上していたが,科研費以外の予算にて導入できた.このことが,次年度使用額が生じた理由である.2020年度分の予算と合わせて,研究成果発表の旅費および義手改良に伴う消耗品費等に使用する予定である.
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Remarks |
公益財団法人京都技術科学センター主催のテクノアイデアコンテスト「テクノ愛2019」においてグランプリを受賞。全国の大学から38テーマの応募があり、第1次審査(書類審査)によって9テーマが選出された。そして最終審査において、「装飾性と機能性を兼ね備えた小児用動力義手」のタイトルで口頭発表とデモを行い、審査の結果、高い完成度と実用性が認められ、グランプリを受賞した。
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