2021 Fiscal Year Research-status Report
社会的行動障害者における問題行動の背景にある脳機能基盤の解明と臨床応用
Project/Area Number |
18K10696
|
Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
平岡 崇 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (20351926)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椿原 彰夫 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10138117)
三原 雅史 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80513150)
目谷 浩通 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30330583)
用稲 丈人 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (00802688)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 社会的行動障害 / 高次脳機能障害 / 脱抑制 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
一億総活躍社会の実現が望まれるが、脳外傷・脳血管障害などによる高次脳機能障害、なかでも社会的行動障害者の社会参加についてはその障害特性から実現が難しい。厚労科研費研究による成果物に「社会的行動障害によって社会生活に大きく影響するような問題行動を生じることがあります」との記載があるとおり、機能障害の結果として触法行為に至るケースも珍しくない。これらの原因としては、おそらく社会的行動に大きく関与する基底核や辺縁系などの脳神経基盤へのダメージの結果として、善悪の判断は可能であるにもかかわらず、理性のコントロールが外れ、欲求に支配された行動となり触法行為を含む問題行動に至った可能性がある。これらの欲求コントロール障害の発症基盤を解明し対処法を見いだすことが医学的に重要である。現時点での仮説として、①側座核や眼窩前頭皮質 (OFC; Orbitofrontal Cortex以下OFC)あるいはそのネットワークを含む前頭葉基底核視床回路の一部としての下前頭前野回路(行動抑制系)の損傷による脱抑制的行動、②黒質線条体ドーパミンシステムによる衝動性抑制不全、③中脳のA10ニューロン群は辺縁系の一部に投射しており報酬(依存)に関与するが、これら”中脳辺縁ドパミン作動系”の誤作動、④OFCの連絡線維を含む大脳深部に位置する大脳辺縁系の損傷による前頭葉症候群のような脱抑制などの神経基盤による行動異常が推定される。今回の研究(fMRIを用いた脳機能画像(神経ネットワーク)の解析)により、社会的行動障害者においては、扁桃体(辺縁系)と側頭葉のネットワークに問題が示された。このことにより高次脳機能障害者とくに社会的行動障害の発症メカニズムの解明の一端となることが期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点でデータの解析は終了し、報告のための論文化を進めている段階であるため、現状概ね順調に進んでいると判断します。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回の研究結果から仮説を一部証明できる研究成果が得られたと考えている。今後は症例数を増やし、より確実な検証を実施するとともに、fNIRS等併用することで、前頭葉背外側面(DLPFC)と辺縁系/中脳/基底核など脳深部のより本能に支配される領域との葛藤(理性による本能の抑制)などについても解明を進めたい。
|
Causes of Carryover |
予定外のコロナ診療などの臨床業務の増加に伴い、当初の計画通り研究時間を確保できなかったため。次年度使用額は、論文化に際しての英文校正費用等に使用予定。
|