2019 Fiscal Year Research-status Report
温熱プレコンディショニングによるシスプラチン誘発性腎障害軽減の機序解明
Project/Area Number |
18K10699
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
岩下 佳弘 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (70623510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯山 準一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (00398299)
桑原 孝成 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (00393356)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 全身温熱刺激 / プレコンディショニング / シスプラチン / 急性腎障害 / 炎症 / TRPV4チャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス実験においてシスプラチン投与前の温和な全身温熱刺激によるプレコンディショニング(mild systemic thermal preconditioning, MSTP)はシスプラチン腎症を軽減する。今回,MSTPによる腎保護効果へのtransient receptor potential vanilloid 4(TRPV4)チャネルの関与について検討した。 MSTPによる腎保護効果へのTRPV4チャネルの関与を検討するために薬理学的TRPV4阻害実験を実施した。マウスを通常飼育(Cont)群,シスプラチン投与(Cis)群,TRPV4阻害後にシスプラチンを投与した(Inh + Cis)群,MSTP実施後にシスプラチンを投与した(Mstp + Cis)群,TRPV4阻害後にMSTPを実施してシスプラチンを投与した(Inh + Mstp + Cis)群に分けた。 Cis群の腎障害マーカーの発現は,Cont群に比して有意に増加したが,TRPV4阻害剤およびMSTPにより,有意に減少した。Inh + Mstp + Cis群では,KIM-1およびHSP70の発現をMstp + Cis群に比して減少する傾向を示した。Cis群の炎症関連遺伝子の発現はCont群に比して有意に増加し,TRPV4阻害剤およびMSTPにより有意に減少した。Mstp + Cis群は,炎症関連遺伝子をInh + Mstp + Cis群に比して減少する傾向を示した。 MSTPの腎保護効果へのTRPV4チャネルの明確な関与を示すことはできなかった。しかしながら,TRPV4チャネルの阻害剤はMSTPなしの場合でも腎保護効果を示したことから,TRPV4チャネルの阻害はシスプラチン腎症に対して保護効果を有することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温熱プレコンディショニングがシスプラチンによって活性化される炎症性シグナルを軽減することを確認した。腎組織に多く発現しているTRPV4チャネルが熱受容に関与して細胞内の抗ストレス反応を促進させると考えられたが、TRPV4チャネルの明確な関与を示すことはできなかった。TRPV4阻害剤は、1)HSF(もしくはその他の因子、ラジカルスカベンジャー産生など)の活性化を阻害する一方で(この阻害は腎保護にネガティブに働く)、2)炎症状態においては、Ca++が過剰に存在するため、すなわち、部分的アゴニストではなく、列記としたアゴニストとしてのCa++量が作用する必要があるため、この部分を阻害(TRPV4)することで、炎症反応を持続するためのCa++が供給できないため、全体的に炎症反応を抑制し、結果として腎保護効果が得られていると推察される。このことを確認することを計画していたが、現在、Covid-19の影響で実験がストップしている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験再開は、Covid-19が落ち着き、大学内が平常に戻ることが前提である。今後TRPV4の関与を明らかにするために、シスプラチン投与前(1h)にTRPV4阻害剤を投与した実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
タンパク質発現量の自動解析システムの不良が見つかり、その交換修理に約4ヶ月を費やしたため、タンパク質解析に必要であった経費を持ち越すこととなった。年明けからはcovid-19の影響で実験に充てる予定の時間が徐々に確保できない状況となった。
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