2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of hearing impairment simulator system to promote understanding hearing impaired and its application to education
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18K10708
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
松井 淑恵 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10510034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入野 俊夫 和歌山大学, システム工学部, 教授 (20346331)
長谷川 純 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 准教授 (20290554)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 聴覚 / 加齢 / 知覚 / 老人性難聴 / 模擬難聴 / 単語了解度 / 認知負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高齢者の語音の聞こえと、高齢者の聴力を模した模擬難聴を使用した時の若年健聴者の聞こえを比較することで、高齢者の聞こえを模擬難聴がどこまで再現できるか、を再検討した。若年健聴者、高齢者、高齢者のオージオグラムによる模擬高齢者の3被験者群に対し、雑音下での4モーラ単語の了解度を比較した。実験の結果、特にSNRの低い音声に対しては、模擬高齢者は高齢者に比べて単語了解度が高く、SNRが高い音声に対しては、高齢者と模擬高齢者が同程度の単語了解度となった。重畳雑音がバブルノイズの場合とピンクノイズの場合を比較すると、非定常な雑音であるバブルノイズの方が高齢者と模擬高齢者の単語了解度の差が大きい結果が得られた。音素ごとの了解度と異聴先を分析したところ、周波数帯域が高い音素では高齢者と模擬高齢者の了解度が近い値を示し、周波数帯域の低い音素には了解度にばらつきがみられた。さらに、同様の3被験者群で残響時間が0.5 sから2.5 sの残響下での4モーラ単語の了解度と音素別了解を比較した。その結果、どの残響条件においても、模擬高齢者は高齢者に比べ単語了解度と音素別了解度が高い傾向にあった。ただし、聴力が比較的良い高齢者は、残響時間が短い場合に若年健聴者・模擬高齢者群に近い了解度を示した。雑音下条件、残響条件の両実験ともに、高齢者のオージオグラムの閾値だけでは説明できない結果を示した。 その他の実験として、「語音の聞き取りは可能だが聞こえにくい」状況が認知負荷にどのような影響を与えるかについても検討した。聞取課題と視覚課題によるデュアルタスクを設定し、難聴条件で視覚条件の反応時間が増加すると予測したが、そのような結果は得られなかった。聴覚末梢の機能低下による高次の認知処理への影響は限定的であることが明らかになったが、実験課題の難易度が適切であったどうかの再検討も必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度もコロナウィルス対策のため、高齢者を対象とした実験は、引き続き制限をかけざるを得なかった。一方で、模擬難聴を用いた実験では、実験の信頼性を高めるための追加実験を実施し、また、高次機能に対する老人性難聴の影響を探る実験を開始できたため、当初とは異なる方向ではあるものの、研究の進捗としては埋め合わせることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
模擬難聴システム自体は改善と整理が続けられているため、模擬難聴システムを使った演習に利用できる教材(簡単な実験)を作成することが課題である。そのための基礎研究データの収集を引き続き行う。 2021年度は高次機能に対する聴覚末梢の機能低下の影響についての検討を開始することができた。これまでに実施してきた実験パラダイムの範囲を広げることができたため、環境音やパラ言語情報等、ことば以外の音の知覚認知の実験に応用することを検討している。この応用によって、普段の生活に近い状況を模した実験の設計ができると考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度もコロナウィルス対策のため、実験室における人を対象とした実験に制限をかけざるを得なかった。高齢者を対象とした実験は、2020年度と同様、参加者のリスクの観点から実施することができなかった。このため、実験謝金の繰越が必要となった。また、国内会議がほとんどオンライン開催となり、旅費としての支出が不可能であった。2022年度の初頭から、少なくとも国内会議は現地開催が増えつつあるので、研究交流と意見交換のためにも参加したい。
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