2019 Fiscal Year Research-status Report
剪断波イメージングによる次世代の筋メカニクス可塑性評価の開発と運動療法の基盤創出
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18K10715
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
谷口 圭吾 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (90381277)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 運動器理学療法 / 筋メカニクス / 医用画像評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ヒト骨格筋における力学的な特性の可塑性解明および運動療法の基盤形成にむけて,筋メカニクス評価の生理学的および臨床的な意義の確立に関わる実験をおこなった.ヒト大腿直筋3部位を対象に筋スティフネスと筋伸長に伴う受動張力の関係性を検討した.固定遺体から対象筋の近位・遠位腱を切離して取り出し,力学試験装置を利用した漸増負荷の伸長課題を行い,筋の近位・中央・遠位のスティフネスをせん断波エラストグラフィで測定した.その結果,3部位全てで回帰式は有意であり,正の相関関係を認めた.決定係数は近位部で0.97,中央部で0.95,遠位部で0.80と強い直線関係がみられた.この知見から剪断波を用いた筋弾性率の定量から受動張力を推定評価できる可能性が示唆された.また,超音波せん断波イメージング技術を用いて,ヒト骨格筋の粘性に及ぼす静的なストレッチングの影響を検討した.対象は健常若年男性の腓腹筋内側頭とした.運動課題は他動的な足関節最大背屈位を5分間保持する静的なストレッチ運動とした.筋縦断面の筋束を分析の関心領域とし,運動介入の前後および施行後5,10,15,20分後に,粘性に関連するせん断波の周波数分散性,スティフネスに関連する弾性率を測定した.その結果,腓腹筋の弾性率は運動前 (106 kPa) に比して,運動直後 (78 kPa) に低減 (-26%) が認められ、20分後まで有意に低値を示した.一方,周波数分散性は運動前 (36 m/s/kHz) に比して,運動直後 (26 m/s/kHz) に最も低減 (-25%)するが,15分以降は有意な差を認めなかった.静的なストレッチングは筋スティフネスのみならず,筋組織の粘性にも即時的な効果をもたらす可能性が示唆された.これらの知見は剪断波イメージングを用いた筋メカニクス評価の臨床的有用性の解明に繋がる基盤になりうると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カラードプラ法に基づくせん断波の映像化システムの妥当性解明は今後の検討が必要であるものの,筋粘弾性特性に及ぼす運動の影響を評価することで,筋メカニクスの可塑的な変化を多角的に検証する実験はほぼ予定通り遂行できている為.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,骨格筋を標的に従来の音響放射圧法を用いて筋組織弾性を計測するとともに,カラードプラ法で筋線維方向に伝搬する剪断波を映像化・定量化することで得られる筋弾性値との比較検証を予定している.本実験を遂行することで新規手法のカラーフロー画像による筋弾性評価の妥当性を検討し,その成果を学術大会および国内外の論文で公表する計画を立案している.
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由について,2019年にドプラ法によるせん断波の映像化システムを活用した筋メカニクス可塑性評価と運動療法の基盤形成のなかで,特に新規手法のカラーフロー画像による筋弾性評価方法の確立に向けた実験が遂行できなく2020年に実施予定である為.2020年度の研究経費は申請時に記載した使途に加えて,前年度の助成金残額を使用し,超音波カラーフロー撮像に要する力学試験機器や消耗品の購入,研究協力謝金や学会発表・論文投稿時の費用に充てる予定である.
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