2020 Fiscal Year Research-status Report
剪断波イメージングによる次世代の筋メカニクス可塑性評価の開発と運動療法の基盤創出
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18K10715
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
谷口 圭吾 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (90381277)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 運動器理学療法 / 筋メカニクス / 医用画像評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ヒト骨格筋における力学的な特性の可塑性解明および運動療法の基盤形成にむけて,筋メカニクス評価の生理学的および臨床的な意義の確立に関わる実験をおこなった.献体を対象とし,皮膚および深筋膜が大腿直筋の弾性に与える影響を検討した.超音波せん断波イメージングを用いて筋弾性を筋の近位部,中央部,遠位部で測定した.その結果,いずれの部位,組織処理下においても,膝屈曲に伴い筋弾性率は増加した.膝屈曲120度における皮膚有および皮膚剥離条件の平均弾性は,生体での報告と同様に近位部が高値を示す一方,深筋膜の剥離によって弾性は低下し,3部位とも同程度の値となった.したがって深筋膜が筋弾性変化の不均一性に関与する可能性が示唆された.また,静的ストレッチングが内転筋群の筋スティフネスに及ぼす急性効果を検討した.対象は健常成人男性とし,ストレッチングは股屈曲0°および膝屈曲90°における股関節最大外転位にて1分間×5セット実施した.ストレッチング介入前後の最大股関節外転角度および他動的な外転0°から40°までの弾性率を計測した.その結果, 介入後の最大外転角度は, 介入前と比較して有意に増加した(+6.9 %). 長内転筋は交互作用を認め, 外転40°にて介入後の弾性率(19.4kPa)は介入前(24.4kPa)と比較して有意に低下した(-20.4 %). 一方, 薄筋, 大内転筋は, 有意な交互作用および時間の主効果を認めなかった.今回の股関節外転ストレッチングは, 最大外転角度を増大させ, 長内転筋の受動的なスティフネスを低下させる一方, 薄筋および大内転筋には影響を与えないことが示された. これらの知見は剪断波イメージングを用いた筋メカニクス評価の臨床的有用性の解明に繋がる基盤になりうると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カラードプラ法に基づくせん断波の映像化システムの有用性検証は今後の継続した検討が必要であるものの,筋弾性の可塑的な変化や筋メカニクス評価の妥当性を多角的に検討する実験はほぼ予定通り遂行できている為.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,骨格筋を標的にカラードプラ法で筋内の剪断波を映像化・定量化することにより得られる筋弾性値と従来の音響放射圧法による筋組織弾性値との比較検証を予定している.本実験を遂行することで新規手法のカラーフロー画像による筋弾性評価の妥当性を検討し,その成果を学術大会および国内外の論文で公表する計画を立案している.
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由について,ドプラ法によるせん断波の映像化システムを活用した筋メカニクス可塑性評価と運動療法の基盤形成のなかで,特に新規手法のカラーフロー画像による筋弾性評価方法の確立に向けた実験が遂行できなく2021年に実施予定である為.2020年度の研究経費は申請時に記載した使途に加えて,前年度の助成金残額を使用し,超音波画像の撮像に要する力学試験機器や消耗品の購入,研究協力謝金や学会発表・論文投稿時の費用に充てる予定である.
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