2020 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性錐体路障害に対応する新しい糖尿病運動療法の開発
Project/Area Number |
18K10726
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
村松 憲 杏林大学, 保健学部, 准教授 (00531485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志茂 聡 健康科学大学, 健康科学部, 准教授 (80734607)
丹羽 正利 杏林大学, 保健学部, 教授 (90274985)
生友 聖子 東京医療学院大学, 保健医療学部, 助教 (90515884)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 運動療法 / 運動野 / 皮質脊髄路 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は以前、1型糖尿病モデルラットの大脳皮質から脊髄に運動指令を伝える皮質脊髄路の軸索が糖尿病によって損傷し、それに伴って運動野面積縮小することを報告した(Muramatsu et al., 2018)。昨年度は前述した障害に対する運動療法の効果を明らかにするために、皮質脊髄路障害が生じる病期20週間の1型糖尿病モデルラットを、通常の飼育を継続するDM-SED群、有酸素運動を行うDM-AT群、運動学習を伴う複雑な全身運動(スキルトレーニング)を行うDM-ST群に分類し、2週間の運動療法を実施してその効果を調べた。その結果、DM-ST群のみ運動野の拡大と、握力などの運動機能の改善が認められた。これは、スキルトレーニングによって運動野から脊髄への興奮伝達が改善したことを示唆しているが、その機序は不明であった。そこで本年度は、運動療法を実施した後のラットの大脳皮質運動野を電気刺激することによって四肢から導出される誘発筋電図を記録しながら、皮質脊髄路を脊髄レベルで切断し、その変化を観察した。その結果、DM-SED群、DM-AT群では皮質脊髄路切断によって誘発筋電図が消失する一方、DM-ST群では皮質脊髄路切断後も潜時の長い、小さな振幅の誘発筋電図が残存することが明らかになった。以上の結果はスキルトレーニングを行うことによって、皮質脊髄路以外の代償的な運動性下行路の活性化/形成することを示すものであり、DM-ST群において観察される運動野の拡大には代償的な運動性下行路の活性化/形成が関与している可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度の実験は多施設に所属する共同研究者との連携を前提に予定されたものであったが、コロナウイルス感染拡大に伴う複数回の緊急事態宣言の発令によって研究者の自由な移動、施設の利用などが妨げられたため、予定していた脳の可塑性に関わる分子マーカーの発現を調べる実験の大半を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルス感染拡大が今後どのように推移するのか不明であるため、感染拡大の収束によって共同研究が可能となる場合と感染拡大の継続によって共同研究が困難となる場合の二つを想定して研究を推進していく。共同研究が可能となった場合には脳の可塑性に関わる分子マーカーの発現を調べる実験を予定通り実施する。施設間の移動が一部可能な場合には、検体を郵送した上で解析を行えるように環境を整えて予定した実験を行うことを検討する。これも不可能な場合には代替え実験を検討する。代替えの実験は運動療法後の動物の脊髄にトレーサーを注入し、逆行性標識されるニューロンの脳内分布を調べる。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大に伴う複数回の緊急事態宣言の発令によって研究者の自由な移動、施設の利用などが妨げられたため、予定していた一部実験が実施できなかったため。
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