2018 Fiscal Year Research-status Report
老化幹細胞ニッチにおける筋再生制御に関わる因子の同定
Project/Area Number |
18K10730
|
Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
祐實 泰子 畿央大学, 健康科学部, 講師 (80425454)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今北 英高 畿央大学, 健康科学部, 教授 (00412148)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 筋の分化 / 筋の再生 / 幹細胞ニッチ / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの分子が骨格筋の再生修復制御に関与することが明らかになっているにもかかわらず、老化に伴う骨格筋の線維化や筋量の減少(サルコペニア)などの問題を解決するには至っていない。本研究では、老化した線維芽細胞と筋芽細胞が、お互いにどう影響し合うのかを検証、影響を与える分子を同定することで、筋細胞の再生制御に関わる新しいメカニズムを見出す可能を追求する。人工的に細胞老化を誘導する細胞培養系の構築により、老化に伴い変化する骨格筋の再生修復に関わる因子を同定し、その生体内機能を解明することができれば、サルコペニアや筋組織の線維化などに対する分子制御に一助を与えられると考える。 H30年度は、正常な細胞にがん遺伝子を発現させると促進される発癌ストレスを利用して、速やかに細胞老化と類似の不可逆的な増殖停止OIS(Oncogene-induced senescence)を起こすことができる細胞培養系を立ち上げた。培養細胞系は、hTERTを発現するヒトの正常線維芽細胞(TIG3)に対して、がん遺伝子である活性型Rasタンパクの発現操作を行なうことにより、細胞老化が誘導できる。そして、その活性型Rasタンパクの発現操作は、テトラサイクリン又はその誘導体により細胞を処理して行なうことが出来る。このシステムの利用は、研究協力者より使用許可を得て実行し、発現誘導等の確認を行った。また、継代回数の少ない横紋筋芽細胞C2C12を購入し、分化誘導する系を構築、C2C12の分化は細胞のウェスタンブロット等でいつかの分化マーカーの発現で確認できた。今後使用する予定である胎児由来のラット胚線維芽細胞 (REF)の作成は、筋損傷ラットモデルと同系の妊娠ラットを使用してしおこない、低酸素の環境下で初代培養系の確立も終えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、DNA組換え実験やタンパク質の解析など分子生物学的手法に必要な実験機器等を整えるとともに、様々な細胞培養系を実際に構築することを計画していた。しかし、新しい培養室のセットアップしながらの研究遂行であったため、設備の準備等により実験の中断を余儀なくされた。また、教育の間に培養等長期に継続する実験に従事するため、時間を十分に確保するのが難しい状況であった。セットアップが終了すれば、スピードアップできると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、横紋筋芽細胞C2C12の分化を従来の免疫染色やウエスタン等で確認する方法ではなく、蛍光顕微鏡下で簡単に評価できる方法の検討を新たに立案した。C2C12細胞に緑色蛍光タンパク質(GFP)及び赤色蛍光タンパク質(RFP)をそれぞれ恒常的に発現させることで、分化が誘導され融合したC2C12を細胞を、顕微鏡下で黄色の蛍光色として可視化できるのではないかと考えた。この方法が確立すると、色の変化で分化が評価できる。既に構築した細胞老化の誘導系においては、老化誘導した細胞の上清を、C2C12細胞に添加する方法(パラクリン)や、老化誘導した細胞と共培養する方法で、老化誘導した細胞がC2C12の分化にどのような影響を及ぼすのか検討する計画である。分化に影響を与える培養系が確立してすれば、老化誘導前後の細胞で、DNAマイクロアレイやメタボロームを行い網羅的に解析し、再生や分化制御に関わる分子を同定する。同時に、細胞の免疫染色やウェスタンブロット等の方法でも、新たに分化に伴い発現の変化するタンパク質を同定すると共に、その分子が分化に与える影響を解析したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
購入予定であった血清のロットチェックで良いものが期間内に見つからず14万円ほど未使用額が生じた。また、分担研究者に配分した研究費は、当初予定していた学会参加が分担研究者の用務繁多のため見合わせになり未使用額が生じた。 次年度使用額と翌年度分として請求した助成金と合わせて、研究遂行のために使用する。 次年度には購入できなかた血清も合わせ、細胞培養、タンパク質の解析、遺伝子組み換え実験、DNAマイクロアレイやメタボロームの解析などにかなりの費用が見込まれる為、有効に活用する。
|
Research Products
(1 results)