2018 Fiscal Year Research-status Report
Combination treatment of stem cell and exercise therapies in a Wistar Kyoto rat model of traumatic brain injury
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18K10731
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田尻 直輝 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (80782119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00305525)
森信 繁 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (30191042)
安原 隆雄 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (50457214)
亀田 雅博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50586427)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新生児低酸素虚血性白質障害 / 細胞移植 / 豊かな環境飼育 / リハビリ / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / ミエリン形成 / 神経保護・修復作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画では、頭部外傷うつ病動物モデルラットを用いて、細胞移植及びリハビリの有する神経・血管新生作用と神経保護・修復作用について研究する予定であった。しかし、所属先が異動となったため、頭部外傷うつ病モデルラットの作成が困難となり、その代案として、研究のコンセプトは変更せずに、社会的ニーズが高い新生児低酸素虚血性白質障害(NWMI)を用いた細胞移植とリハビリ研究に取り組んでいる。 NWMIは、早産児において分娩時の低酸素虚血が原因でおこる白質障害である。これは脳室周囲白質軟化症(PVL)の一種であるが、脳室周囲にcyst(嚢胞)を伴う重症型のcystic PVLとは異なり、MRIでもcystが認められない軽症型の白質障害である。周産期医療の進歩により、重症型のcystic PVLは激減する一方で、このような軽症型の白質障害は増加傾向にあり、社会問題となっている。 NWMIは、在胎28-32週の早産児に好発し、症状としては、脳性麻痺を含む運動障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)といった認知障害などを引き起こすことが知られている。病理組織学的には、オリゴデンドロサイト後期前駆細胞(preOL)の選択的障害が特徴で、ニューロンの障害は認められない。胎児脳におけるオリゴデンドロサイトの分化段階で、preOLは低酸素虚血による障害を受けやすい。この時に分娩となった新生児は、白質障害のリスクが高まることが報告されており、根本的な治療法は未だに確立されていない。 本研究では、この疾患モデル動物を用いて、外部からオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を補充することで、NWMIの病態や機能改善に繋がるかどうかを検討している(実験1)。また、発育期のリハビリによる効果が期待されるが、豊かな環境で飼育し、成熟後の運動機能の改善効果とその作用機序についても解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトにおける在胎28-32週は、ラット脳においては生後3日に相当する。当研究室では、生後3日齢のWistar系雄ラットを用いて新生児低酸素虚血性白質障害(NWMI)モデルを確立しており、そのラットの右総頸動脈を閉塞及び6%の低酸素に1時間曝露してモデルを作成した。移植方法は、あらかじめ用意しておいたGFP遺伝子を持つ生後1日目のグリーンラットから混合グリア培養を作成し、そこから得たオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を生後5日目のモデルに静脈内投与を行った。投与後のOPCの脳内への分布や他の臓器を含め網羅的に動態解析を行っている(実験1)。この移植実験に至るまで、モデルの作成技術やOPCの培養・移植技術の安定化まで非常に時間を要した。 また、これと並行して、発達期におけるリハビリ機構の基礎研究を展開するため、モデルラットを作成し、生後25日後にリハビリの一つである豊かな環境飼育群(EE)と通常飼育群(SE)の2群に分け、生後70日間まで飼育した。後肢引き戻し、棒上歩行、はしご歩行、ロタロッドの各試験により後肢運動機能を経時的に評価した。また、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色などによる組織評価や皮質内微小電気刺激(ICMS)による運動野マップの変化の解析も行った(実験2)。 行動学的評価は、EE群において、生後35日と生後70日での後肢引き戻し、棒上歩行、はしご歩行がSE群と比較して有意な運動機能改善が認められた。また、HE染色において、NWMIモデルのSE群で認められる障害側の感覚運動皮質の菲薄化が、NWMIモデルのEE群では著しく軽減していた。さらに、ICMSにより、大脳皮質運動野における低酸素虚血による神経回路の変化がEE飼育によって正常化したことが認められた。このEEの実験については、比較的順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1に関しては、モデルの作成技術やOPCの培養・移植技術は習得した。NWMIの新たな治療に繋げるためには、まずは、実験1の以下の詳細な検討が必要である。(1) 静脈内投与に加え、脳内移植への有効性の検討、(2) 長期的な移植細胞(OPC)の生存と分化率の評価、(3) 移植されたOPCの生着・分化するに辺り、脳内でどのような因子が関連しているのか検討(in vitro含む)。(4) OPC移植による運動機能や組織学的・電気生理学的な評価、(5)OPC移植とリハビリ(豊かな環境に加え、強制的・自発的運動を含む)との相乗効果の検討である。 また実験2に関しては、リハビリの一つであるEEの大脳皮質運動野におけるオリゴデンドロサイトの分化率促進の有無や樹状突起の形態変化、ミエリンの形成変化を解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画通りに、全て順調に実施できたわけではなかったため、次年度使用額が発生してしまった次第である。今後の研究の推進方策に示したように、当該年度で得られた結果を元に、次年度でさらなる検討・解析を進めていきたい。
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