2018 Fiscal Year Research-status Report
ドップラーセンサとAIによる非接触での排尿意図検知システムの開発
Project/Area Number |
18K10736
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
高野 映子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 健康長寿支援ロボットセンター, 外来研究員 (60778637)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 和泉 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 副院長 (50215448)
寺西 利生 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (90387671)
山田 和正 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 治験・臨床研究推進センター, プロジェクトマネージャー (10564304)
室谷 健太 久留米大学, 付置研究所, 准教授 (10626443)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 排尿意図 / 心拍数 / 呼吸数 / 非接触 / 見守りセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症患者が夜間に尿意を感じた場合、その排尿行動は例え自身のバランス障害が存在しても、ためらいなく遂行される。日中であれば家族の目があり、また明るい場所で移動が行われることもあって、比較的問題は少ない。しかし夜間では状況が一変する。睡眠からの覚醒が十分では無く、暗い部屋や廊下をトイレまで移動することで、転倒リスクは日中と比べて驚異的に跳ね上がってしまう。このため、認知症患者の排尿行動時の転倒リスクを管理するための生活支援機器のIoT化は喫緊の課題である。 この問題を解決するため、以下の研究が必要と考えた。課題1)認知症患者の比率が高い当センターの入院患者における転倒インシデントの分析を通じて、尿意に発する行動が転倒リスクをどの程度、高くするかの検討、課題2)ベッド上からトイレに向かう排尿行動が起こる前に、尿意を検知するシステムの開発のための基礎的なトライアルと計測データの人工知能(Artificial Intelligence: AI)による分析、課題3)早期の検知のために、尿意を感じた時に起こる自律神経系の変化の特徴抽出、課題4)その特徴を抽出して尿意検知が可能になった場合のIoTを使った生活支援システムの構築である。 本年度は、課題1)の検討を行った。Watson Explorerを用いて、当センターで集積した3000件以上の認知症入院患者における転倒転落事故報告書の大規模テキストマイニング解析を試みた結果、認知症患者が夜間(21-6時)に排尿意図により転倒する割合が高く、重点的なケアが必要であることが示唆された。さらに、認知症有無別に排尿意図による事故件数を集計したところ、排尿意図による事故件数は認知症患者に多く、一方で、その割合は非認知症患者の方が高い傾向にあることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本IBMが開発したAI “Watson Explorer” を用いて、転倒転落報告書のテキストマイニングを行なった。それによって、当センターでこれまで集積した約3000件を超える大規模転倒転落報告書のテキストマイニング解析を試み、患者の内的要因の一つである行動意図因子(例:トイレ、歯磨き、廊下の移動等)に絞った因子分析をした。 Watson Explorerを用いて、「排尿意図あり」因子の抽出を行った結果、排尿意図に起因するとフラグ付けされた事故は全体の41%であった。認知症患者が夜間(21-6時)に排尿意図により転倒する割合が高く、重点的なケアが必要であることがわかった。具体的には、全3439レコードに対し、1425レコード(約41%)が排尿意図に起因していた。この結果は、排尿意図の予兆検知や、排尿のための移動の補助を行うことで、最大41%の転倒転落事故を防止することが可能だと考えられる。 さらに、認知症有無別に排尿意図による事故件数を集計したところ、排尿意図による事故の件数は認知症患者に多く、割合は非認知症患者が高いことが明らかとなった。また、性別ごとに集計した排尿意図による事故の割合を、認知症・それ以外で集計したところ、認知症の有無を問わず、性別間の排尿意図による事故の割合の差異は、ほとんどないことがわかった。これらの結果より、これまで明らかにされてこなかった認知症患者の行動意図などの内的要因に対する転倒リスクを統合的に検討できたことを示唆している。
|
Strategy for Future Research Activity |
認知症患者の排尿行動時の転倒リスクを管理するための生活人工知能(Artificial Intelligence:支援機器のIoT化は喫緊の課題である。認知症患者の睡眠中の心拍数と呼吸数を「非接触」で計測し、AIを用い排尿行動が起こる前の心拍数と呼吸数の特定の変動パターンを抽出することで、見守りセンタによる排尿意図の検出システムの開発に繋げるために、我々は以下の序列での研究が必要と考えた。 課題1)認知症患者の比率が高い当センターの入院患者における転倒インシデントの分析を通じて、尿意に発する行動が転倒リスクをどの程度、高くするかの検討、課題2)ベッド上からトイレに向かう排尿行動が起こる前に、尿意を検知するシステムの開発のための基礎的なトライアルと計測データのAIによる分析、課題3)早期の検知のために、尿意を感じた時に起こる自律神経系の変化の特徴抽出、課題4)その特徴を抽出して尿意検知が可能になった場合のIoTを使った生活支援システムの構築である。 現状、上記課題の2)には着手しており、マイクロウェーブを利用した呼吸数、心拍数の計測は可能となっている。しかし、主に通信環境の問題から、病院内ではマイクロウェーブによる計測データが安定して得られる環境が構築できないため、同データのAIによる分析までには至っていない。このため、今回の研究では課題1)にAIを利用した検討を行った。同時に課題4)にも着手しており、排尿行動に移る前のストッピングを行うための傾聴ロボット、トイレまでの移動時に安全を確保する杖・歩行器ロボットの開発にも取り組んでいる。また課題3)に関しては、実験系の構築を行い、来年度には着手し、その解析にもAIを使う予定としている。
|
Causes of Carryover |
本年度、ベッド上からトイレに向かう排尿行動が起こる前に、尿意を検知するシステムの開発のための基礎的なトライアルと計測データのAIによる分析には着手しており、マイクロウェーブを利用した呼吸数、心拍数の計測は可能となっている。しかし、主に通信環境の問題から、病院内ではマイクロウェーブによる計測データが安定して得られる環境が構築できていため、同データのAIによる分析までには至っていない。また、早期の検知のために、尿意を感じた時に起こる自律神経系の変化の特徴抽出にもAIを使う予定である。 来年度は、まず実験系の構築を行い、解析ソフトの開発を行う予定であり、それに関わる開発費も次年度使用予定である。
|
Research Products
(8 results)