2020 Fiscal Year Research-status Report
虚血心におけるサルコペニア誘導性心機能変容と骨格筋再生を介した機能改善の機序解明
Project/Area Number |
18K10737
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
竹原 有史 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (90374793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川辺 淳一 旭川医科大学, 医学部, 教授 (10400087)
田中 宏樹 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70596155)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サルコペニア誘導心機能不全 / 心臓悪液質 / miRNA / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の検討において、後天的サルコペニア誘導心筋虚血マウスにおいて循環血液中exosomeに含有されているmiR-16-5pが特異的に発現亢進していることが明らかとなった。さらに低酸素負荷培養下における新生児ラット心筋細胞(NRVM)に対しmiR-16-5p mimicの導入によりアポトーシス誘導が亢進することが明らかとなった。2020年度ではまず、同in vivoモデルにおける循環血液中miR-16-5pの発現亢進について詳細を検討した。半網羅的に同個体の骨格筋、心筋、脳、肝臓におけるmiR-16-5p発現亢進の有無を探索したところ、萎縮骨格筋においてmiR-16-5の発現亢進が確認され、サルコペニア誘導との関連が示唆された。興味深いことに、虚血負荷のない状態であったが後天的サルコペニア誘導では心筋においてもmiR-16-5pの発現亢進が確認された。一方、脳、肝臓での発現亢進は認められなかった。次にmiR-16-5pが虚血心筋細胞のアポトーシス誘導を亢進させる機序について検討を行った。Target gene scan解析の結果、アポトーシスーオートファジーの調節因子であるSESN1遺伝子がmiR-16-5pのtarget geneであることが示唆されたため、低酸素負荷NRVMにおけるmiR-16-5p-SESN1発現系の関与を評価した。結果、miR-16-5p mimic導入はNRVMにおけるSESN1蛋白合成を抑制し、下流シグナルであるmTOR蛋白発現を亢進させることが明らかとなった。低酸素負荷NRVMにおけるオートファゴソーム形成を評価したところ、miR-16-5p導入群で著明なオートファジー抑制が観察され、miR-16-5pによるSESN1転写抑制がmTOR発現亢進を介してオートファジー抑制、ひいてはアポトーシス亢進を生じせしめることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は同定された候補因子による病態への関与について機序の解明が進展した。まず、候補因子miR-16-5pは後天的サルコペニア誘導により萎縮した骨格筋及び心筋より分泌されることが明らかになった。このmiR-16-5pはin vitroにおいて虚血心筋に対しアポトーシス誘導を促進させることが前年の検討で明らかとなっているが、その機序としてmiR-16-5pのTarget遺伝子であるSESN1の転写を抑制することで、その下流シグナルであるmTOR蛋白の発現亢進を引き起こし、結果、オートファゴソームの形成抑制がアポトーシスを促進させることが明らかとなった。2020年度の検討結果として循環血液中のexosomeに含有されるmiR-16-5pが骨格筋―心筋臓器連関因子として、サルコペニア誘導による心機能改善効果の阻害要因である可能性が高まったことは大きな成果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
miR-16-5pが後天的サルコペニア誘導によりマウス骨格筋より動員されることが明らかになったが、直接的に虚血心筋に対し機能回復不全を生じせしめるかはいまだ不明である。従って、最終年度では虚血マウス心における循環血液中のmiR-16-5pの果たす役割を明らかにする。虚血マウスにmiR-16-5pプラスミドを経静脈的に投与し、心機能及び心筋におけるmiR-16-5p発現量について検討を行う。またサルコペニア誘導心機能回復不全マウスの確立した運動回復プログラムにおいても検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
実験動物の購入、機序解析の実施に研究予算を充当したが、年度末残額が生じたためこれを次年度使用額として使用する。使用目的は導入遺伝子プラスミドの作成、解析試薬、培養基材とする。
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