2021 Fiscal Year Research-status Report
吃音の治療前後での脳の構造的・機能的接続の変化と病態の関係
Project/Area Number |
18K10741
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
安 啓一 筑波技術大学, 産業技術学部, 講師 (70407352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
灰谷 知純 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 流動研究員 (90804500)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 吃音 / MRI / 白質 / 角回 / 流暢性 / デフォルトモードネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
発達性の吃音は幼児期に発症することが多く,約1%が成人しても症状が続くと言われている(Guitar, 2014)。吃音の原因にはさまざまな要因が考えられ,本研究のテーマである脳の神経接続および機能的接続(デフォルトモードネットワーク)も関係している。本研究で注目する,吃音と言語に関係する脳部位(ブローカ野)での機能的もしくは器質的な違いについての研究はさまざまな研究者によって進められており(Sommer, et al., 2002; Chang, et al, 2015),吃音から回復した場合の前後の白質(脳の神経部分)の違いについても明らかになってきている(Chang, et al., 2018)。本研究では吃音の治療前後の脳神経の機能的・器質的な違いについて着目している。本年度は,国立障害者リハビリテーションセンター研究所感覚機能系障害研究部灰谷知純氏を分担者に迎え、研究体制を整えた。灰谷氏は吃音の脳研究および吃音の心理的側面についての研究を専門としており,さらなる研究の加速が見込まれる。灰谷氏とは毎月の打ち合わせを実施し,研究代表者が拡散テンソル画像の分析、分担者の灰谷氏が安静時脳活動の分析を担当した。コロナ禍のため,被験者を集めての実験が十分に実施できない状況であった。このような状況下で少数の効果的な実験を行うことを目指し,これまでの吃音のある群の参加者の属性を再分析した。その結果,吃音のある群に比べ,統制群の数と属性にばらつきが見られたことから,統制群28名の測定を実施することとした。事前のサンプルサイズの検証から,統制群も吃音のある群に近い属性となった。これらの統制群のデータの分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため,MRI実験のための被験者募集と実験の実施が制限されているため,被験者目標の数には届かない状況であった。また,治療前後の比較のために,これまでに吃音の治療を受けた方の2回目の実験を実施しようと計画していたが,吃音の治療の種類もさまざまであるため比較が難しいことが議論された。当初は吃音の治療後の脳画像を被験者内で比較することを目標としていたが,今後は方針を若干変更し,統制群のとの比較を中心に,吃音に関するアンケート結果をなどのさまざまな被験者の属性を共変量とした統計的な分析に重きを置くこととする。これまでに報告している脳の白質(神経繊維)の接続の角回白質部分の接続性が低下(Yasu, et al. , 2018)に関する結果に加え,安静時の脳機能画像の分析も分担者の灰谷氏の強力で進めることができた。今年度,改めに統制群を28名追加することができたので,より統計分析が進むことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
去年度に引き続き,感染症対策による実験の制限のため,今年度もMRI実験の数が制限がかかることが予想される。介入後の患者及び実験協力者に対して再度実験を行うことが難しいが,これまでに得られた約130件の実験データから被験者の属性に合わせた分析を進める。また,拡散テンソル画像による脳の構造分析に加え,安静時脳活動の分析も進むことから,これらの相関に関する分析も進める方針である。今後新たな実験参加者を募るのは難しいため,今後の方針として,統制群が足りない場合には,公開されたデータセットとの統合も予定している。その場合のデータ処理の方法について分担者と協議中であり,今年度中に解析が進むと考えられる。これまでの成果をついての原著論文執筆も進んでおり,学会発表を目標とする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で実験実施の回数が制限されているため,人件費の部分が次年度に繰越になっている。成果の発表機会として,論文の投稿および英文校閲のための必要も次年度に繰り越している。
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Research Products
(19 results)