2019 Fiscal Year Research-status Report
低出力超音波療法が筋再生に及ぼす影響とその作用機序の解明
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18K10756
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
坂本 美喜 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40365177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
只野 ちがや 東邦大学, 医学部, 講師 (40261094)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 筋損傷 / 物理療法 / 低出力パルス超音波療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
低出力超音波療法(LIPUS)は、創傷治癒促進を目的とした治療法であり、骨折や腱損傷に対して使用されている。筋損傷に対するLIPUSの効果検証は、筋横断面積の変化や線維化の範囲など組織学的評価および筋張力評価などが多く実施されているが、有効とする報告と無効とする報告が混在する。さらにLIPUSの筋再生過程におよぼす作用機序は未だ不明な点が多い。LIPUSはメカニカルス刺激を細胞に与えることから、先行研究ではLIPUSを照射した滑膜細胞や軟骨においてインテグリンを介したPI3K-Aktが活性化が報告されている。そこで本研究では、骨格筋においてもLIPUS照射によりAktが活性化されるのか、また筋肥大に関連するAkt-mTOR-p70S6K経路に変化が生じるのかを検証した。さらに、筋分化マーカーであるmyogeninの発現も検証した。 <方法> 実験動物はICR系雌マウス(12週齢)を用いて、①筋損傷群、②筋損傷+LIPUS群にわけた。LIPUS照射条件は、周波数;3 MHz、 強度0.5 W/1平方cm、照射サイクル;50%、照射時間10分とした。照射は、損傷後2時間経過後に1回照射し、2回目以降は1回/日の頻度で実施した。なお筋損傷群では、照射強度を0WにしてLIPUS照射群と同様の操作を行った。損傷後2日、3日および5日後に前脛骨筋を採取し凍結固定後に横断切片を作成し、損傷の程度を確認後、Akt, mTOR, p70S6Kのリン酸化についてイムノブロット法にて解析した。 <結果・考察> Akt、mTOR、p70S6Kのリン酸化について検討した結果、3日後、5日後のいずれにおいても、LIPUS照射群でAkt、p70S6Kの活性化は高くなる傾向はあるものの有意差は認められなかった。Myogeninの発現についてもLIPUSの有無による差は見られなかった。今回の結果では、LIPUSは筋損傷回復を促進する効果は少ないことが示唆された。今後は、その他のシグナル伝達や筋分化マーカーを用いた解析もすすめて検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、Akt-mTOR-p70S6Kの2日、3日、5日後の変化を検討した。筋損傷後のこれらの変化は、損傷後1日で高くなるという報告もあることから、より早期での観察も必要であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
筋損傷後の早期(1、2日後)におけるLIPUSの影響を検討するために、Akt-mTOR-p70S6Kおよび筋分化マーカー(MyoDおよびMyogenin)の発現を観察する。またストレス応答と関連し細胞の分化や増殖を制御するMAPK経路についても、LIPUSによる影響の有無を評価する。
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Causes of Carryover |
(理由)今年度は、Akt-mTOR-p70S6Kシグナル伝達経路の評価を行う予定で計画したが、Akt-mTOR-p70S6K経路の検出を実験条件を検討しながらすすめたため、予定よりも時間を要した。そのため試薬の使用量が少なく、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度は、LIPUS照射後のサンプリング時間を再検討し、MAPK経路の活性化の有無について検証する予定である。また筋分化マーカーの発現についてもあわせて検討する。これらの解析のために動物および抗体を購入する費用として使用する。
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