2019 Fiscal Year Research-status Report
膝前十字靱帯損傷における関節動揺の安定化と神経機能回復過程の解明
Project/Area Number |
18K10785
|
Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
金村 尚彦 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20379895)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 膝前十字靭帯損傷 / 関節不安性 / 感覚機能 / 神経可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度に引き続き本研究において、治癒過程における、靱帯に存在する神経機能と中枢神経ネットワークが回復するか検証している。 本年度は、膝関節支配領域における中枢神経系ネットワークの解析のために、損傷後治癒モデルラットを作成し、疼痛や固有感覚に関係している、酸感受性イオンチャネル(ASICs)と神経栄養因子BDNF、NT3に着目し分析を進めている。 膝関節支配領域である第3~6腰髄レベルの後根神経節を採取し、total RNA抽出、cDNA合成を行い、Real time PCR法にてASIC1、ASIC3mRNA、BDNFmRNA、NT3mRNA発現量を調べ、ΔΔCT法を用いて各群で比較した。後根神経節においては、ASIC3について、4週SHAM群に対し、ACL切断群が0.69倍、制動群が0.66倍であり、8週SHAM群に対してACL切断群が0.66倍、制動群が0.73倍であった。4週では有意差を認めなかったが、8週において有意差を認め、SHAM群におけるmRNA発現量はACL-T群、制動群に対し有意に高値であった。ASIC1、BDNFとNTについてはそれぞれ有意な差を認めなかった。 後根神経節におけるASIC1およびASIC3陽性細胞を免疫組織化学染色にて観察し、後根神経節単位面積あたりの陽性細胞数を算出した。ASIC1は中型・大型細胞への陽性を示し、一方ASIC3は小型・中型・大型細胞へ陽性所見を認めた。BDNFとNT3については、すべての細胞に陽性所見を示した。8週において、ACL切断群と比較して、制動群、非制動群が有意に単位面積当たりの数が減少していた。後根神経節に投射された感覚情報は、因子により違いを認めた。ACL切断群は神経機能が低下するが、関節制動により、神経機能が回復する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、2年目の研究の結果を踏まえて、現在脊髄神経と後根神経節における神経再生に関与している神経栄養因子と可塑性に関係する因子の局在について、組織学的検証と分子生物学的解析を実施している。また細胞培養については、靭帯由来や関節内における滑膜組織より線維芽細胞を単層培養する最適なプロトコールを確立し、予備実験として免疫染色、生化学分析を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
終年度については、確立した細胞培養のプロトコールに従い、タイムポイントを増やして、神経修復に関与する膝関節組織内の神経可塑性に関与する神経栄養因子発現について探索し、治癒した靱帯内における、標的細胞の神経栄養因子産生能力について進める。
|
Causes of Carryover |
予定していた消耗品について予定した安く購入できた物品があったため、少額が残っている状況である。本年度の消耗品の購入で使用をする。
|