2018 Fiscal Year Research-status Report
Normal free motion and mechanical stress on the damaged tissue promote healing of the anterior cruciate ligament and meniscal tear
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18K10786
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
高柳 清美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20274061)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前十字靱帯断裂 / 半月板損傷 / 自己治癒 / 動物実験モデル / 関節制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内外で断裂直後より正常な関節運動を繰り返えし、前十字靭帯(以下ACL)治癒を促進するという研究は存在しない。また、ACL損傷に伴う半月板断裂の自己治癒の研究と半月板の自己治癒の要因に関する研究も少ない。我々はACL損傷後に生じる膝関節の異常運動を制動する動物モデルを作製し、次の研究を行ってきた。 ➀ ACLが断裂した膝の関節運動を変化させることは、細胞の生物学的応答を改善し、メカノトランスダクション機構を介して自発的治癒につながることを証明した。ACL-切断群(ACL-T)、異常運動制御群(CAM)およびインタクト群(IN)にランダムに割り当てた。ACL切断術後1、2、4、6、8週間に組織学・分子生物学・生体力学的評価を行った。ACL-T群のACLはすべて治癒しなかったが、CAM群は自己治癒し、典型的な靭帯治癒反応を示した。損傷後8週間での力学的特性は、無傷のACL強度の50%が戻ってきたことを示した。 ② ACL切断によって誘発される関節の不安定性は膝の変形性関節症(OA)の要因と考えられている。不安定性および再安定化ACL切除モデルを用いた関節軟骨に対する関節の再安定化の効果を検討した。CAM群とACL-Tを作製し、軟骨のX線分析、組織学的および免疫組織化学分析、およびPCR分析を行った。関節不安定性は、ACL-T群はCAM群より高かった。CAM群は軟骨構造を維持した。関節不安定性の再安定化は、炎症性サイトカインを抑制し、それによってOAの進行を遅延させる。 ③ ヒトのACL損傷に伴う半月板損傷に対して早期からの荷重と関節制動により外側半月板の69%は完全、18%は不完全に、内側半月板の58%は完全に治癒した。ACLは滑膜で被覆され、ACLが断裂すると滑膜も断裂し、関節内に血液が伝播する。靭帯および滑膜の治癒に関わる因子が半月板の治癒成績に影響している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
どのようなACL損傷患者が保存的治療法の適応となるのかを明らかにしていくことは、ACL損傷患者に複数の治療法を提示することが可能となり、それぞれの患者の社会的背景に応じた適切な治療法を患者自ら選択することを可能にする。そこで、ACLの損傷部位が靭帯自己治癒能力にどのような影響与えるのかをCAMモデルを用いて組織学、生体力学的側面より以下の研究を行った。 Wistar系雄性ラットのACL切断後に、膝関節制動を行った中間部損傷(MP)群、関節制動を行った大腿骨近位部損傷(FS)群、関節制動を行わなかった中間部損傷(ACLT-MP)群、関節制動を行わなかった大腿骨近位部損傷(ACLT-FS)群の4群に分類した。切断後4、6、8週で、左後肢の膝関節を採取し、免疫組織化学的染色を行った。また、損傷後8週で、万能材料試験機、および我々が作成した治具を用いて引張試験を実施した。 関節制動非適応であるACLT-MP群およびACLT-FS群では、切断したACL組織の連続性は認められなかった。 一方で、関節制動を行ったMP群、FS群では、損傷ACLの自己治癒が確認された。関節制動非適応であるACLT-MP群およびACLT-FS群では、切断したACL組織の連続性は認められなかった。 一方で、関節制動を行ったMP群、FS群では、損傷ACLの自己治癒が確認された。破断強度においてMP群・FS群は、対照群と比較して有意に低かった。破断時変位量においてMP群・FS群は、対照群と比較して有意に大きかった。剛性においてMP群・FS群は、対照群と比較して有意に小さかった。MP群とFS群との間に力学特性の差は認めなかった。 新鮮ACL損傷に対する保存的治療法は,4損傷部位を問わず適応される可能性がることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
ACL、半月板が自己治癒しない主要因は、三次元空間で機能するACLの特異性、関節内組織の栄養供給の特殊性、膝関節への荷重と異常な関節運動によるメカニカルストレスだと考えられる。そこで今年度は、メカニカルストレス(自由運動、自由運動と超音波刺激負荷)と関節制動がACLの治癒過程においてどのように靭帯の形態、機能、強度に関与するかを明らかにする。自由運動群、自由運動と超音波刺激負荷群、シャム群の3群とする。自由運動と超音波照射群は申請している超音波縦波装置を用い、剃毛した膝窩部にACL走行に沿って照射する。照射強度は膝の外側側副靭帯を対象とした先行研究を基に1.5MHzとし、炎症期を避ける目的で2週後より開始する。人工靭帯切断群は8週後に関節制動目的の人工靭帯を切離する。組織の採取と力学試験はACL切断後の2、4、8、12週後および24週後に行う。 ① 組織化学分析として、一般・特殊組織染色による治癒組織のコラーゲン走行、形態観察を行う。治癒ACLのⅠ型・Ⅲ型コラーゲン、フィブロネクチンなどの分布と走行を定性的、定量的に評価する。 ② 力学的解析として、屈曲90°の治癒ACLの破断強度および粘弾性特性を電磁力式微小試験機にて計測する。 ③ 組織化学分析として、一般組織染色による治癒組織の形態観察、治癒半月板のⅠ型・Ⅲ型コラーゲン、フィブロネクチンなどの分布を定性的、定量的に評価する。
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Causes of Carryover |
半月板損傷の自然治癒の研究に入る前に前十字靭帯の切断部位別自己治癒の違いを明らかにすることで研究の質を高めることが明らかになり、行う研究の順番を変更したため。
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