2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K10795
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
伊藤 猛雄 日本福祉大学, 健康科学部, 教授 (70159888)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内皮依存性膜過分極因子(EDHF) / 動脈グラフト / 異常血流 / 内膜肥厚 / 血管内皮機能障害 / 一酸化窒素(EDNO) / Ca2+活性化K+チャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞は,内皮由来血管弛緩因子(一酸化窒素,EDNO)の機能を介して動脈硬化の発症を抑制している.異常血流(血流減少)はEDNOの機能を減少させる可能性が報告されている.しかしながら,動脈グラフトにおける異常血流と内皮由来膜過分極因子(EDHF)の機能変化との関係は不明である. 動脈グラフトの内膜肥厚における異常血流の働きを明らかにするために,ウサギ自家動脈グラフトモデルを考案した(Tabata K et a1. 2017).このモデルは,麻酔下のウサギにおいて,右総額動脈を体外に採取し,その後嫡出動脈を再び端々吻合することにより作成した.無結紮グラフトは,グラフトされた総頸動脈の下流の分枝を保持することにより作成した.また異常血流(poor-runoff)グラフトは,右内頸動脈と3本の右外頸動脈の分岐のうち2本を結紮することにより作成した.実験は,グラフト手術後4週間を経過した動物を使用して行った. 無結紮グラフトと異常血流グラフトにおいて,平滑筋細胞の静止膜電位およびアセチルコリン(ACh)による内皮依存性膜過分極反応を測定した.静止膜電位は,無結紮グラフト群と異常血流グラフト群で同レベルであった.両グラフトで,ACh(0.3~10 μM)は濃度依存性に平滑筋細胞を過分極させた.過分極の程度は,無結紮グラフト群>異常血流グラフト群であった.ACh(10 μM)による過分極はKCa channel阻害薬のシャリブドトキシン+アパミンで抑制された.このことより,異常血流は動脈グラフト血管のEDHFの機能を減弱させることが明らかになった. 現在,摘出したグラフト血管を用いて,内皮依存性弛緩反応(メカニカルレスポンス)を指標として,異常血流と内皮由来弛緩因子(EDNOとEDHF)の機能変化との関係について検討を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,自家動脈グラフトにおける異常血流‐内皮依存性血管弛緩因子(EDNOとEDHF)の機能変化‐内膜肥厚との関係を明らかにし,内膜肥厚を抑制するための有効な治療法を検索することを目的としたものである. 本年度の結果は,異常血流が動脈グラフトにおけるEDHFの機能を抑制する可能性を明らかにした.研究はおおむね順調に進行していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果を確認するための追加実験を行うとともに,摘出無結紮グラフトおよび異常血流グラフト標本でのAChによる内皮依存性弛緩反応を指標として,EDNOとEDHFの機能変化と異常血流の関係を明らかにする. 具体的には,両グラフトの摘出標本におけるAChによる内皮依存性血管弛緩反応を,NO合成阻害薬L-NNA(内皮細胞でのNOの合成を阻害するため)とKCa channel阻害薬(内皮細胞のKCa channel 阻害しEDHFの機能を阻害するため)存在下で検討し,異常血流とEDNOおよびEDHFの機能変化との関係を検討する.
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Causes of Carryover |
今年度は,ウサギ動脈グラフト摘出血管での血管平滑筋細胞の膜電位を測定する研究を行った.これらの実験において,安定した再現性のある結果を得ることが著しく困難であり,多くの時間を要した.特に異常血流グラフト血管での安定した静止膜電位とAChによる過分極の記録は困難であった(しばしば実験装置や実験系の改良が必要とされた).そのため,両グラフトの内皮依存性弛緩反応を指標としてEDNOとEDHFの機能変化と異常血流との関係を検討する実験に,十分な時間を割くことができなかった. <使用計画> 本年度の追加実験(内皮依存性電位変化の測定)を行うとともに,次年度の研究計画に従い,異常血流動脈グラフ卜血管での内皮機能変化(EDHFの機能変化)に関する研究を行う.この実験を遂行するための試薬やその他の消耗品の購入には,本年度未使用額と次年度の経費を充てる予定である.また,次年度の経費は,論文作成や関連する学会に出席するための旅費などにも使用する予定である.
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