2018 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症者の生活機能改善と包括的リハビリテーションに寄与する運動療法の開発
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18K10802
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 大誠 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 講師 (10411886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 仁 広島大学, 医歯薬保健学研究科(保), 教授 (40311419)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 運動療法 / 生活機能 / 運動能力 / 統合失調症 / 包括的リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における受療中の精神疾患者は約392万人と増加傾向にあり、そのうち入院者数は約29万人と報告されている。精神疾患入院者のうち、1年以上の在院期間の入院者は18万4千人(64%)を超えると報告されており、長期在院が未解決の課題として残されている。なかでも、入院患者の約6割を占める統合失調症者に対する地域生活への移行を含めた包括的なリハビリテーションプログラムの策定が精神科医療における重要課題の1つとされている。 これらを背景に、日本における統合失調症の治療は、精神症状に対する薬物療法が第一選択肢とされており、生活機能の基盤となる身体への医学的対応については関心が低く、身体への治療的介入を含めた適正な保健医療サービスおよび地域生活移行への取り組みが十分になされていない。これらの背景には、精神疾患である統合失調症の治療に身体的治療を取り入れる理論的背景、あるいはその具体的治療法が日本国内では十分に確立していないことがあげられる。本研究課題では、統合失調症者に対する運動療法が病院内の治療プログラムにとどまるのではなく、生活機能の改善に向けた身体活動増進に焦点をあて、統合失調症者に対する運動療法が早期退院および地域生活への移行を含む包括的リハビリテーションに寄与するかどうかについて明らかにする。 本年度は予備的研究として健常者を対象に縦断的介入研究を実施し、運動療法およびデータ収集・分析の精度を上げることを目的に、研究を進めた。この結果、2019年度に実施する臨床研究の基礎準備が整うことにつながっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、本研究の第一段階として、特定の疾患で定期的に医療機関にかかっていない健常者を対象に、2019年度に実施予定である運動療法の臨床応用について研究計画を精緻化することを目的に、運動主体感と身体所有感に関する予備的研究を実施した。 本年度の研究では、精神症状評価尺度を用いて統合失調症型パーソナリティーの高い者を研究対象し、統合失調症者を対象としたときに生じる病院内環境による身体活動性の低さ、薬物の副作用、入院の影響などの特性を除外した検討が可能となり、運動療法の成果が高い精度で得られることを期待したものである。本研究により、統合失調症パーソナリティの高い対象者において、運動主体感および身体所有感が低く、さらに運動パフォーマンスが低下することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、研究協力者の所属する精神科病院において、統合失調症者を対象に臨床介入研究を実施する。2018度の予備的研究から得られた知見をもとに、臨床における研究計画を精緻化し、より効果的な運動療法の介入が実現できるように準備を重ねて実施する予定である。現在倫理申請をしている段階であり、計画に合わせて順調に研究を進められている。 臨床研究で実施する運動療法は、これまでにBBATの講習を受けた各研究協力施設の理学療法士が、1回60分、1週間に2回の頻度で8週間、合計16回実施する。本研究は、2施設の精神科病院に協力施設として了承を得ており、各施設と連携を取りながら研究を進めていく。各協力施設の対象者は、50名ずつを予定し、無作為比較対照試験に準じて、その半数である25名ずつを対照群として設定する。研究協力施設における研究打ち合わせも順調に進んでおり、研究実施体制は整っている。
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Causes of Carryover |
2018年度の研究成果について論文投稿し、論文掲載決定後の請求が3月末になったため予算執行が遅れた。2019年度では、すでに支払いが適切に行われ、概ね順調に予算を執行している状況である。2019年度は臨床研究において予算を計画通りに執行する予定である。
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[Book] 理学療法管理学2018
Author(s)
奈良勲、橋元隆、淺井仁、藤村昌彦
Total Pages
189
Publisher
医歯薬
ISBN
978-4-263-26583-3
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