2018 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷に対する運動療法のメカニズム研究:筋の収縮弛緩による脊髄再生の可能性
Project/Area Number |
18K10804
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
宮本 修 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00253287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 恵美 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30792072)
氷見 直之 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70412161)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 骨格筋収縮 / 電気刺激 / BDNF / 脊髄再生 / 運動機能回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、脊損後のトレッドミル運動が中枢神経の再生を促進し運動機能を改善したという報告がなされているが、そのメカニズムは明らかではない。本研究では、運動時の筋収縮そのものが脊髄でのBDNF産生を誘発することを予想し、それが運動機能の回復に関与する可能性について検討した。8~9週齢雄ラットを脊損のみ群(SCI)、脊損+電気刺激群(SCI+ES)、椎弓切除のみ群(Sham)の3群に分けた。脊損は、ラット脊髄T9へ20gの重りを25mmの高さから落下し1分間静置することで作製した。脊損後、前脛骨筋に皮膚電極を装着し10mA, 2Hzの刺激強度で筋収縮を誘発した。損傷当日から左右10分/日、5日間/週で4週間刺激を行った。運動機能評価としてBBBスコア、傾斜台試験、ロータロッド、組織学的評価として脊髄の空洞形成やTUNEL染色を行った。さらに、BDNFやGAP43(再生軸索のマーカー)の免疫染色及びウェスタンブロッティングとELISAを行った。損傷2週間後からSCI+ES群において、運動機能が有意に回復し、4週間後においても改善が見られた。組織学的には、SCI+ES群の損傷1週間後のTUNEL陽性細胞の減少とBDNF陽性ニューロンの増加及び脊髄のBDNF量の増加が見られた。さらに、同群に損傷4週間後の脊髄の空洞体積縮小とGAP43陽性軸索の増加が見られた。以上の結果から、電気刺激による下腿骨格筋収縮の誘発によって脊髄BDNF産生が誘発され、そのことが細胞保護と神経再生を促進して運動機能回復に寄与したことが示唆された。さらに、SCI+ES群では前脛骨筋のBDNF量においても増加が見られており、このBDNFが筋収縮のシグナルとして脊髄に作用した可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験において脊髄損傷モデル作製方法および電気刺激による筋収縮誘発方法などの実験手技を確立しており、本年度予定の研究項目をほぼ遂行することができた。一方、トレーサーによる神経路再生の検索については現在実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって、骨格筋への電気刺激によって運動機能が回復することを示すことができた。今後は運動機能回復のメカニズムの解明を中心に行う。筋収縮の情報が脊髄に伝わる経路の検索と同時に、脊髄再生の因子としてBDNFーTrkB系の関与の検証を行う。研究体制は当初の計画に実験補助員を追加して進める。
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Causes of Carryover |
組織学的検討において、教室在庫のトレーサーや染色キットを使用したために新たに購入した量が予定より少なかったこと、参加学会が年度末であったために次年度予算での旅費となったことなどによって、次年度使用額が生じた。この次年度使用額と当該年度以降分の助成金は物品費、旅費、人件費(実験補助員)に使用する。
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Research Products
(4 results)