2019 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷に対する運動療法のメカニズム研究:筋の収縮弛緩による脊髄再生の可能性
Project/Area Number |
18K10804
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
宮本 修 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00253287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 恵美 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30792072)
氷見 直之 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70412161)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 骨格筋収縮 / 電気刺激 / BDNF / 皮質脊髄路 / 軸索再生 / 運動機能回復 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究で脊損ラットの下腿骨格筋を電気刺激することで組織傷害の軽減と軸索再生の促進及び運動機能の回復が起こり、その際に脊髄及び骨格筋においてBDNF産生が有意に増加し、この産生されたBDNFが細胞保護効果と軸索再生に関与した可能性について報告した(Hayashi N et al, Spine J, 2019)。今年度、BDNFを介した機能回復のメカニズムに関して筋収縮の必要性とその情報の伝達経路について検討した。重りをラットの第9胸椎レベルに落下させて脊髄損傷モデル (SCI) を作成し、損傷直後から両側前脛骨筋に対して経皮的電気刺激 (ES)を行った。ラットをSCIのみ群、SCI+電気刺激群(SCI+ES)、後根求心路切断群(SCI+DRX+ES)、筋弛緩剤であるダントロレン投与群(SCI+Dant+ES)に分けた。運動機能の評価にはBBB スコア、傾斜台試験、Rotarod試験を用いた。損傷中心部のBDNF産生(免疫染色とELISA法による定量)とアポトーシス細胞数を測定した。また、 L2-4後根神経節 (DRG) のBDNF/NeuN二重免疫染色、及び皮質脊髄路の神経トレーサー(BDA)とpGAP43の二重染色を行った。損傷6週間後、SCI+ESでは全ての運動試験において改善が見られ、損傷中心部への皮質脊髄路再生が認められた。損傷3日後のSCI+ES群では他の群と比べてDRGと損傷部のBDNF産生量が増加し、TUNEL陽性細胞数が減少した。一方、SCI+DRX+ESとSCI+Dant+ESではBDNF の産生は減少し、アポトーシスの抑制も見られなかった。以上の結果から、SCI後のESによる運動機能改善のメカニズとして、下腿骨格筋の収縮弛緩が脊髄求心路を介した経路で脊髄でのBDNF産生を促進して運動機能を改善したことが考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究で、脊髄損傷後の皮下電気刺激による下腿骨格筋収縮によって脊髄でのBDNF産生が増え、運動機能回復が促進されることを示した。今年度計画していたメカニズムの解明として、筋収縮自体の必要性およびその情報が脊髄へ伝わる経路を明らかにした。現在、本年度の研究成果をまとめて論文投稿の準備をしている。現在、BDNFのブロッカーを使った実験を準備しており、研究はほぼ当初の計画通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄損傷後筋収縮による運動機能回復にBDNFが関与していることを明らかにするために、BDNFのブロッカーを使った実験を準備している。さらに、骨格筋収縮が脊髄のニューロンやグリアの細胞新生に関与している可能性についても今後検討する予定である。
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Causes of Carryover |
各種試薬の使用量が予定より少なかったことや、予定していた学会の参加費を別経費で支出したため次年度使用額が生じた。この次年度使用額と当該年度以降分の助成金は消耗品、旅費、人件費(実験補助員)に使用する。
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Remarks |
川崎医科大学・生理学2教室 http://www.kawasaki-m.ac.jp/physiology/index.html
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