2018 Fiscal Year Research-status Report
運動による認知機能や気分の改善およびその効果を修飾する生活習慣要因の解明
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18K10820
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
松本 直幸 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (00252726)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中強度運動 / 視覚探索 / 反応抑制 / ストループ干渉 / 注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、単発的な運動がどのような種類の認知機能の改善に有効かについて検証することを目的としている。運動による気分改善効果をうつ病など心の病の「予防」のために利用していくには、まず、単発的な運動の効果を明確にしていくことが必須であると考え、2018年度は、①視覚探索機能を評価するd2テスト、②競合する反応行動を抑制し(反応抑制)、適切な行動を選択するフランカー課題、および③より高次なレベルでの反応抑制力が求められるストループ課題を用いて、事前に行う短時間中強度の自転車運動による認知機能への影響を検証した。 その結果、d2テストでは、エラー率に安静条件と運動条件間に有意差は無かったものの、解答数が運動条件でのみ有意に増加した (運動前627 vs. 運動後669問, p < 0.01)。フランカー課題においては、認知的干渉量が運動条件でのみ有意に減少した (運動前50.4 vs. 運動後37.6 ms, p < 0.05)。ストループ課題においては、ストループ干渉量に運動の効果は認められなかったが、運動条件では、反応時間が不一致試行のみで運動後に有意に短縮した (運動前696.6 vs. 運動後640.2 ms, p < 0.05)。また、全ての課題において、覚醒度の間接的指標となり得る心拍数は、運動条件でのみ運動後のテスト中に有意に高値であった (運動前のテスト中 vs. 運動後のテスト中, d2テスト:77 vs. 82 bpm , フランカー課題:75 vs. 82 bpm , ストループ課題:72 vs. 79 bpm , いずれもp < 0.01)。 これらの結果から、運動による覚醒レベルの上昇が運動終了後のテスト中も維持されることにより、注意力が高まったもしくは注意を向ける範囲が広がったことで、標的を素早く見いだす、あるいは不必要な情報に惑わされず適切な選択をするといった能力が向上したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトを対象とした実験については、概要欄に記載した内容以外に、解析途中のデータがあり、それを合わせると、概ね計画通りに進んでいる。対して動物実験は、現在のところ一時休止状態である。ヒト対象の実験はこれまでの成果と合わせ、着実に前進している状況なので、まずはヒト対象実験に注力しているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトを対象とした一過性運動の影響に関する研究については、2018年度に光イメージング脳機能測定装置(fNIRS)が導入できたので、これまでに検証してきた課題を中心に、課題遂行中の前頭前野脳血流量をモニターする実験をまず進める予定である。また、当初予定の計画(自転車運動による認知機能への効果の検証)に加え、事前に行う運動の種類にバリエーションを持たせ、運動種の違いが認知機能課題成績に及ぼす影響についても並行して実施予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度予算のおよそ8割を光イメージング脳機能測定装置(fNIRS)の購入に充てたため、消耗品の支出を抑制的に執行したこと、および実験動物の購入がなかったことで、約20万円の繰り越しが生じた。繰越金は実験動物の購入や、ヒト対象実験の被験者謝金等に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)