2019 Fiscal Year Research-status Report
運動による認知機能や気分の改善およびその効果を修飾する生活習慣要因の解明
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18K10820
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
松本 直幸 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (00252726)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中強度運動 / 反応抑制 / 短期記憶 / 認知的干渉 / 前頭前野 / 光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、単発的な運動がどのような種類の認知機能の改善に有効かについて検証することを目的としている。運動による気分改善効果をうつ病など心の病の「予防」のために利用していくには、まず、単発的な運動の効果を明確にしていくことが必須である。2019年度は、①競合する反応行動を抑制し(反応抑制)、適切な行動を選択するフランカー課題、および②情報の短期的保持とそれを逐次更新する能力を評価する2-back課題を用いて、事前に行う短時間中強度の自転車運動による認知機能への影響を検証した。さらに、上記の課題はいずれも前頭前野の関与が強いとされているので、新規に購入した光イメージング脳機能測定装置(fNIRS)を用いて、今年度は前頭前野の血流量の変化についても検証した。 その結果、フランカー課題では、認知的干渉量が運動条件でのみ有意に減少した(プレ49.9 vs. ポスト38.9 ms, p < 0.05)。2-back課題では、反応時間、正解率ともに運動の効果はみられなかった。しかし、いずれの課題においても、前頭前野の血流量は、運動後の課題遂行中においてのみ有意に高値であった(フランカー課題における血流の変化量[ポストとプレの差]:運動条件0.82 vs. 安静条件0.17 mM・mm, p < 0.001, 2-back課題:運動条件0.78 vs. 安静条件0.09 mM・mm, p < 0.01)。 すなわち、運動により注意機能を司る前頭前野が活性化し注意力が高まったことで、不必要な情報に惑わされず適切な選択を行うという能力が向上したことが示唆された。一方、2-back課題で運動の効果が得られなかったことから、より難易度が高い課題では運動の効果が得られにくいことが示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトを対象とした実験については、概要欄に記載した内容以外に、運動の種類(強度)を変えての検証など、解析途中のデータがあり、概ね計画通りに進んでいる。ただし動物実験については、現在のところ一時休止状態である。ヒト対象の実験はこれまでの成果と合わせ、着実に前進している状況なので、まずはヒト対象実験に注力しているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトを対象とした実験は、2018年度に導入できた光イメージング脳機能測定装置(fNIRS)を用いて、これまでに検証してきた課題を中心に、課題遂行中の前頭前野脳血流量をモニターしながら実験を進める。また、当初予定の計画(自転車運動による認知機能への効果の検証)に加え、事前に行う運動の種類にバリエーションを持たせ、運動種の違いが認知機能課題成績に及ぼす影響についても並行して実施予定である。すでに自転車運動と比べて低強度のストレッチを事前に行うことの効果について、検証を進めている。
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Causes of Carryover |
消耗品の支出を抑制的に執行したことで、約20万円の繰り越しが生じた。繰越金は、今後のヒト対象実験の被験者謝金等に充てる予定である。
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