2019 Fiscal Year Research-status Report
身体活動増加型の豊かな環境が不安/抑うつ行動と関連する脳機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
18K10830
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
柳田 信也 東京理科大学, 理工学部教養, 准教授 (80461755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 身体活動量 / 豊かな環境 / 自発運動 / モノアミン / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ラットの集団飼育環境及び身体活動増加に特化した豊かな環境における身体活動が健康増進をもたらす脳神経機能、特に神経内分泌系機能に及ぼす影響を解明することを目的とした。そして、その目標達成に向けて、本年度は以下の計画で実験的検討を実施し、いくつかの顕著な研究成果を得ることができた。 【身体活動増加型豊かな環境による活動量測定】 ① 身体活動増加に特化したこれまでにない豊かな飼育環境(エンリッチ環境)として、多層性(マルチストーリー)エンリッチケージを独自に作成した。垂直方向への移動行動を多く行う環境となっており、階段昇降などの生活活動をシミュレーションする行動生理学的介入を可能とするものとなった。 ② 既存の垂直方向の身体活動が含まれていないノーマル・エンリッチケージとマルチストーリー・エンリッチケージ による活動量の比較し、マルチストーリー・エンリッチケージの身体活動量に対する影響を行動学的に解析した。 これらの検討の結果、活動量計に表れる身体活動量には両群間で有意な差が認められないが骨格筋量の増加がマルチストーリー―の方が有意に高いことがわかり、同程度の量でも身体負荷を強い環境の設定に成功したと考えられる。 【身体活動増加型豊かな環境の脳機能への影響】 マルチストーリー・エンリッチケージにおける飼育とノーマル・エンリッチケージに飼育において、心理的反応と関連の深い脳内モノアミン量の比較をHPLC法により行った。その結果、マルチストーリー群において、複数の脳部位におけるセロトニン及びドーパミン量、それぞれの代謝産物が増加している傾向が確認された。これらの結果から、本研究で作成した身体活動量増加型豊かな環境は心身に対して既存の方法とは効果を異にする新たなツールとなりうることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前述のような研究成果から、今年度は動物モデルによる行動実験を行う上で極めて重要な実験環境のセットアップに成功したと言える。これは世界をリードする 先駆的なシステムであり、次年度以降の生理学的な検討の基盤を充分に整えることができたと考えられる。 今年度に確立した、オリジナルの身体活動量増加型豊かな環境による行動解析システムを用いて、2019年度は身体活動量の増加と、心身の健康増進の連関およびそのメカニズムを解明する実験的な検討を行う。具体的には次に示すような課題に対して、解答を求めることが可能となる。これらのことから当初の研究計画通りに順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、自発運動量を増加させる方法として、運動(エクササイズ)に依存しない身体活動量の増加法を考案することを目指している。研究推進の具体的な方策 としては、多層階の飼育ケージを作成し、さらにさまざまな身体活動ツールを配置することで日常生活における自発的な身体活動量の増加を目指すものである。 このオリジナル飼育ケージを用いる際に、極めて重要な問題は身体活動量の定量化である。そこで我々は、これまでにラットの身体に装着する小型活動量計を用 いて、常に身体活動量を測定する方法を考案した。しかし、この方法には電源供給の問題や装着する重量が大きいため身体的な負荷がかかるなどの深刻な問題が あった。この問題を解消するために、本研究では電気工学の研究者の協力をいただきながら、小型身体活動量計に対する無線給電法の確立およびそれによる軽量 化に取り組んでいく。 このシステムを用いて、複数のラットを同時に飼育しながら、それぞれの身体活動量について、長期間の測定をすることが可能となる。これにより、個々の身 体活動量と脳機能や身体機能の関係性を検討する基礎を固めることが可能となる。これを基に、我々は、この多層階性豊かな環境(身体活動量増加型豊かな環 境)で飼育したラットの脳内神経伝達物質量および筋機能を解析し、身体活動量の増加と健康の関係を解明していく予定である。
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Research Products
(4 results)