2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K10833
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小木曽 航平 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (00711235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 哲也 茨城大学, 教育学部, 准教授 (30613921)
田邊 元 富山大学, 芸術文化学部, 講師 (40758588)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化資源 / 伝統スポーツ / 武術 / 沖縄空手 / 身体技法 / 観光 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度は、文献による日本伝統スポーツの実施状況の把握と次年度の調査地選定に向けた予備調査を行った。8月に全メンバーで実施した沖縄の調査においては、第1回沖縄空手国際大会の参与観察を中心に、そのほかの沖縄伝統スポーツに関する文献収集を行い、今後の研究実施に向けて重要な情報を得ることができた。 沖縄での予備調査の結果、本研究が掲げる4つの分析視点-観光化、担い手の多様化、身体技法の変化、地域コミュニティの再編成-の有効性を検討するという点において、上述の「沖縄空手」が最適な対象であることが判明した。沖縄県は官民挙げて「沖縄空手」を県の象徴にすべく極めて戦略的に動いており、その1つの成果として第1回沖縄空手国際大会が開催された。大会の中心地となった「沖縄空手会館」もそうした一連の動きの中で建設された。また、沖縄空手は県外さらには海外においても人気であり、観光資源としての側面も大いに期待されている。他方、こうした沖縄空手の文化資源化は、担い手らの多様性をある意味では平滑化する側面もあり、担い手らの内部では対立と分裂が進行する可能性があることも否定できない。身体技法の変化という面においても、競技化された空手の影響や海外の担い手らとの交流によって、真正な技に対する揺らぎが見て取れる。担い手や身体技法の変化という要因が今後、どのように沖縄空手のコミュニティを再編成し、沖縄という社会にどんな影響を与えるかなど興味深い論点が発見された。 今後は、沖縄空手に対する分析視点の妥当性をより深い質的調査によって確認し、文化資源化理論の精緻化を図っていきたい。同時に、こうした沖縄空手のような事例を他の日本の伝統スポーツ・武術においても確保できるように調査を継続していくつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「沖縄空手」という最適な研究対象が見つかり、今後の調査及び理論的展望が拓けた。ただし、当初予定していたような調査事例件数を初年度は達成することができず、その点についてはやや進捗に遅れ、修正が出てきていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は1年目で調査対象の適正さが確認できた沖縄空手の本調査を進めていく。当初の計画と異なる点では、メンバーで合同調査を実施するのではなく、それぞれに役割を分担し、時期を分けてフィールドワークを行うことを検討している。 また、計画段階で対象としていた「闘牛」、「綱引き大会」、「流鏑馬」についても各メンバーが分担して調査を行い、その成果を合同ミーティングで共有することとする。加えて、計画にはなかった他の伝統スポーツの事例についてもできる限り収集していくつもりである。
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Causes of Carryover |
適切な執行を行なった結果、少額の未使用額が生じた。次年度経費と合わせて研究協力者の調査旅費等に使用する。
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