女性の性周期を考慮した筋痛マネジメントプログラムの開発

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K10836
• Research Institution: Toin University of Yokohama
• Principal Investigator: 桜井 智野風 桐蔭横浜大学, スポーツ科学研究科, 教授 (30235220)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 骨格筋 / 筋痛 / 女性 / 性周期 / エストロゲン / 筋損傷 / トレーニングマネジメント

Outline of Annual Research Achievements

実験は動物を用いた基礎実験と，ヒトを用いた応用実験に大別され計画された．
実験動物としてWistar系雌性ラットを用い，エストロゲンが骨格筋の炎症および修復過程に及ぼす影響を経時的に観察した．筋再生の過程におけるエストロゲンの効果を調査するために，コントロール(C) ラット，偽手術 (Sham) ラット，卵巣摘出 (OVX) ラットならびに卵巣摘出およびエストロゲン投与 (OVX+E) ラットの骨格筋 (前頸骨筋 : TA) を塩酸ブピバカイン (BPVC) で損傷させた．損傷骨格筋は，無傷の筋と比較して筋損傷後に筋中カルパイン3 (CAPN3) 活性が上昇傾向を示した．損傷した骨格筋におけるHSP70質発現は，OVXラットよりCラットおよびOVX + Eラットで高かった (P<0.005, P<0.05)．Pax7およびMyoD発現は衛星細胞の活性化および増殖を定義するのに役立ち，エストロゲンによって増加することが明らかになった (P<0.05)．これらの知見は，骨格筋損傷に対するHSP70および筋衛星細胞の応答が女性特異的ホルモンのエストロゲンによって媒介することが考えられる．
ヒトを対象とした実験として，成人女性を対象に腓腹筋に筋痛を作成し，性周期の差異による筋痛回復を，筋力，周径囲，関節可動域および血液中の筋損傷指標と共に観察した．実験測定は現在継続中である．今後は6ヵ月以上の経口避妊薬常用群と非常用群を対象に同様の測定を行う他，推奨プログラムの作成と検証を行なう予定である．

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

動物実験において概ね成果をまとめ、論文の投稿にまで至っているものの、コロナ禍の影響で、トレーニングマネージメントの根幹であるヒトを対象にした検証実験が予定通りに進まない状況である。本研究の目的は、女性の体力増進や競技パフォーマンスの向上のために新たなトレーニング方法を模索することであり，そのデータの取得は必須である．したがって，2021年度は試行錯誤しながら目的達成のために測定の機会づくりに励みたい．

Strategy for Future Research Activity

2021度に行う予定である女性アスリートへの聞き取り調査は東京オリパラの開催年となる本年度の現状では困難と考え，一般運動愛好女性へ変更し行う．

女性スポーツ愛好家および一般女性（対象群）への聞き取り調査および実験測定する．その結果を考察し，女性アスリートにも応用できる筋痛マネジメントとして最適なトレーニングプログラムを作成する．また，筋損傷・筋痛に対して男女の特色を生かした治療方法の導入や，回復に向けたリハビリテーションへの導入等も試行し，本研究の社会的な意義を高める．

Causes of Carryover

動物実験において概ね成果をまとめ、論文の投稿にまで至っているものの、トレーニングマネージメントの根幹であるヒトを対象にした検証実験が全く行いない状況である。実験に関わる被験者謝金と成果発表のための学会旅費が未使用となっているのはそのためである。