2019 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸結合タンパク質4と運動による脂質代謝亢進との関連
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18K10838
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
沼尾 成晴 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 准教授 (90454074)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 持久系競技者 / 筋力系競技者 / 推定糸球体濾過量速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸タンパク質4(FABP4)は、脂肪分解や脂肪酸の輸送など脂質代謝の調整に関与するタンパク質である。FABP4は脂肪組織に多く存在し、血液中に分泌される。血中FABP4は継続的な運動トレーニングにより低下することが示唆されているが、運動トレーニング様式による代謝適応の違いが血中FABP4に及ぼす影響は明らかではない。それらの関係を明らかにすることは、運動に対するFABP4の生理的役割の解明に繋がると考えられる。そこで、令和元年度には、運動種目(持久系および筋力系)の異なる競技者における血中FABP4濃度の違いを横断的に検討した。持久系競技者、筋力系競技者、および非競技者(すべて男性)、各11名(年齢:20.8±1.2歳)を対象とし、身体組成(体脂肪量、筋肉量)、筋力(上腕および下肢),および有酸素性能力(最高酸素摂取量)を測定した。また、12時間絶食後の静脈血を採取し、FABP4、クレアチニン(推定糸球体濾過量速度)、および糖,脂質代謝関連指標の濃度を測定した。持久系競技者は、筋力系競技者に比べ、体脂肪量は有意に低値を、推定糸球体濾過量速度は有意に高値を示した。また血中FABP4濃度は、筋力系競技者に比べ、持久系競技者で有意に低値を示した。しかしながら、血中FABP4濃度の違いは、体脂肪量および推定糸球体濾過量速度で補正後、消失した。また、全対象者を用いたステップワイズ回帰分析では、体脂肪量および推定糸球体濾過量速度が血中FABP4濃度の独立した予測因子として採択された。これらのことから、持久系競技者における低い血中FABP4濃度は、運動トレーニングにより生じた脂肪量の低下と腎機能の向上によりもたらされたものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の研究計画に,大きな変更や問題はなく円滑に進めることができたため,おおむね順調に研究が遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は運動競技者および非競技者を対象に、一過性運動中の脂質代謝と血中FABP4濃度の動態との関連を検討する予定である。しかしながら、現在の社会情勢を考えると、対象者の確保が難しい可能性もあり、運動競技者もしくは非競技者のいずれかに絞って検討することも視野にいれる。ただし、現時点においては、令和2年度の研究計画が円滑に進められるよう準備を進めている段階である。
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Causes of Carryover |
次年度に向けて予備実験を実施するため、物品購入費および人件費に充足する予定であった。しかしながら、社会情勢の変化により、予備実験の実施が困難となり、物品購入をせず、雇用もしなかったため、次年度使用額が生じた。繰り越した次年度使用額は物品費および人件費・謝金に使用予定である。
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