2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of evaluation system for dynamic characteristics with two-dimensional nonlinear viscoelastic model of sport surface
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18K10869
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
湯川 治敏 愛知大学, 地域政策学部, 教授 (40278221)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スポーツサーフェス / 2次元着地衝撃 / 2次元非線形粘弾性モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,2次元非線形粘弾性モデルを用いたスポーツサーフェスの動的特性評価法の開発を行う.従来,スポーツサーフェスの特性評価としては①衝撃試験による鉛直方向の衝撃減衰率と最大変位による緩衝性能評価および②特定の条件における動的な摩擦係数の測定によって評価していたが,この方法では人間の動作特性である斜め方向の衝撃やサーフェスとの接触期間全般にわたるような比較的長い作用時間を持つ衝撃力に対する特性を評価していない.そこで,筆者らが開発した2次元衝撃試験と新たに開発した作用時間の長い衝撃発生装置を組み合わせることにより鉛直方向だけでなく水平方向も含めた人間の動作特性を踏まえた衝撃試験を実施し,2次元非線形粘弾性モデルによるモデル化およびパラメータ同定を行い,コンピュータ・シミュレーションによって様々な衝撃様式に対する動的特性を検討する.しかしながら,2次元衝撃試験器のセンサユニットが充分には小型化されていないため,実際の足部と比較するとかなり大きな面積でサーフェスに衝撃を与えていることが課題として挙げられる.そこで初年度はまずセンサユニットの小型化を図ることを計画した.査定額減少の為に充分な小型化には至らなかったものの,上下及び前後2方向の衝撃を同時に測定可能であることは確認できた.今年度はセンサ上部へ人間の着地衝撃を模した比較的作用時間の長い衝撃力を与えられるよう,従来の鉛直方向のみで実施していた衝撃試験機のセンサ部を2方向衝撃センサに置きかえるような改良を行った.その結果2方向衝撃センサに対して作用時間の長い衝撃力を与えられる装置が準備出来た.しかしながら,センサユニットによる2方向衝撃力の検証を行ったところ充分な精度とはいえない測定結果となった.この原因がセンサユニットの構造によるものかデータ処理によるものか様々なアプローチを施行中であり,明確な結論が出せないままとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べたとおり,従来の研究計画では3軸小型荷重センサを2個用いたセンサユニットを設計しており,小型化及び高精度化が期待された.しかしながら査定段階で予算の削減となり,計画していた2個の3軸小型荷重センサを購入することは出来なかった.そこで初年度は2個目の3軸小型荷重センサの替わりとして1軸小型荷重センサを用い,水平方向荷重については3軸小型荷重センサで計測する設計変更を行い,また,2方向衝撃試験の衝撃力の検証を行い,衝撃力については精度良い測定が可能であることを確認できた.今年度はランニング動作における地面反力後半の能動的衝撃に相当する比較的長い衝撃作用時間を発生させることが可能な従来の衝撃試験機に初年度開発した新たなセンサユニットを装着出来るような改良を行った.しかしながら,能動的衝撃に相当する2方向衝撃力を人工芝に対して加えた実験を行ったところ,ウレタン系サーフェスではセンサユニットの加速度波形から積分して速度,変位を算出していたが高速ビデオを利用した検証実験の結果,余り精度良い測定が出来ない可能性が確認された.これは人工芝の場合はウレタン系サーフェスと比較すると衝撃荷重中のセンサユニットは不安定であり,かつ当初予定した質量よりも大きくなったこと,更に衝撃作用時間も長くなり加速度波形が安定して測定できないこと等によるものであると考えられた.そこで従来の加速度波形からの積分によって速度,変位を算出する方法ではなく,センサユニット自体の変位を2方向からレーザー変位計を用いて非接触で測定し,その値を微分して速度を計測する方法に変更した.この測定値の検証及び測定方法の変更およびその確認に多くの時間が割かれることとなり,従来予定していた長い衝撃力を入力とした2方向衝撃試験の実験およびそのモデル化と評価を行うための本格的な実験段階に至ることが出来なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までにセンサユニットの設計変更と製作,長い衝撃作用時間を発生させる衝撃試験器に2次元衝撃センサユニットを装着する為の改良および測定データの検証を行った.その結果,ウレタン系サーフェスでは特に問題とならなかったセンサユニットの2方向の加速度を積分することで速度,変位を求める方法では人工芝に対する実験では精度良く計測できないことが明らかになった.人工芝はスポーツサーフェスとして広く用いられている材料であり,ウレタン系サーフェスの利用範囲と比較すると明らかに広範囲の利用用途があり,人工芝に対する測定が出来ない状況は避けなければならない.そこで様々な検証を行った結果,ウレタン系サーフェスに対して人工芝では衝撃作用期間中の変位が大きいこと,ウレタン系サーフェスと比較して加速度の絶対値が小さくノイズの影響を受けやすいこと,センサユニットの設計上ではサーフェス上のセンサユニットが上下・前後方向に移動した場合もセンサユニットは常に水平を保ったまま移動することを想定しているが人工芝では相対的に柔らかい素材でありかつ機械的なあそびがある為必ずしも想定した動きとならないことなどが理由として考えられた.そこで従来の方法ではなく,センサユニット自体の動きを上下・前後方向それぞれでレーザー変位計を用いて計測し,変位データを微分して速度データを得ることとした.この方法により人工芝に対する2方向衝撃試験も可能となり,様々な衝撃力,衝撃角度を変えた衝撃試験を実施することにより人の動作特性を考慮した短い衝撃(Passive Load)および長い衝撃(Active Load)の双方に対する緩衝性の検討を行うことが出来るようになった.今年度が研究最終年度のため,様々な条件の衝撃試験を行い,緩衝性を検討すると共にサーフェスの2次元モデルの改良を行い,シミュレーションによる緩衝性の評価方法の確立を行う.
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Causes of Carryover |
申請段階の研究計画では3軸小型荷重センサを2個用いたセンサユニットを設計しており,小型化及び高精度化が期待された.しかしながら査定段階で予算の削減となり,計画していた2個の3軸小型荷重センサを購入することは出来なかった.このため3軸小型荷重センサは1個のみ購入し,測定及びその後のデータ処理に必要な高性能ノートPCを購入した.これが初年度から2年目への使用額が生じた理由である.従来のセンサ1個分の購入費と比較しノートPCの価格が低かったため従来今年度利用分としていた予算を使い切るに至らなかった.更に今年度は装置の改良,データの検証,測定方法の変更等により本来予定していた学会発表,論文投稿,スポーツサーフェス施工施設での実験などが実施出来なかったため次年度繰越予算が生じてしまった.次年度は最終年度であり,持ち越した予算により測定精度の検証,様々な条件での測定,データ解析,学会発表,論文投稿などを行う.
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