2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K10875
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
久保山 直己 大阪商業大学, 公共学部, 准教授 (00412718)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中枢疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究(5ヶ年)は動的運動中の脳部位における機能的相補性による筋の協働作用の活性化と中枢疲労の発生過程及び中枢疲労耐性との関係を解明することである。 本年度は研究1年目にあたり、運動中の前頭前野(prefrontal cortex; PFC)の疲労応答について検討することであった。本年度の研究成果はJournal of Human Ergologyに掲載し発表した。研究成果の内容は下記に示す。 目的: 酸素の増加は皮質活性化を反映しているため、近赤外分光法(NIRS)は、持続的運動タスク中の両側の前頭前野(PFC)活性化を調べるために使用することができる。この研究では、最大自発的筋力(MVC)でのハンドグリップタスク中の両側PFCの時間経過による活動化を調べる。方法:健康な右利きの男性被験者7名がこの研究に参加した。 機能的NIRSプローブを皮質上に配置して、被験者は3秒間のMVCでのハンドグリップタスクを50回繰り返し発揮する。結果:対側前頭前野(Contra-PFC)及び同側前頭前野(Ipsi-PFC)の酸素化値は、ベースライン値と比較すると、運動タスクの開始後から有意に増加し(p<0.01)、その後徐々に減少した。一方、Ipsi-PFCの酸素化値は、ベースライン値と比較すると、有意な増加がタスク終了まで続いた。Conra-PFCでの有意な増加が消滅するまで、MVCと積分筋電図(iEMG)は、タスク開始から有意に低下したが(p<0.05)、その後、Ipsi-PFCの有意な増加が継続する中、タスク終了まで筋機能はほぼ一定のレベルを保持した。結論:Ipsi-PFCは疲労困憊に至る運動中に有意に活性し、筋機能をある一定レベルに保持する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定より実験環境の整備が早期に整い、研究を遂行することができた。また、他大学の研究者の協力を得ることができたため、実験デザイン、測定、分析及び成果発表が円滑に進めることができたことが大きいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は疲労困憊に相当する動的運動における中枢疲労及び中枢疲労耐性との関係について検討する。 疲労困憊に至る動的運動中にM1の活性が漸減すると、他の脳部位に運動強度の持続に対する機能的相補性が出現する可能性が考えられる。そのため、運動中にM1を含む複数の脳部位の血液量と動員される複数の筋肉の活動を同時に測定し、疲労困憊まで時系列的に測定する。動的運動を疲労困憊まで行いながら、複数の脳部位と筋肉の活動を測定することで、運動中の皮質制御と中枢疲労の発生過程、及び中枢疲労耐性との関係を明確にすることが可能である。また、今後の研究では正確な運動強度の設定が必要となる。個人の運動強度の決定には、事前時の疲労困憊までの最大運動中の呼気ガス測定と分析を行い正確に運動強度を設定する予定である。 以上のように、本研究では脳部位の正確な脳血液量の変化を捉え、運動中の中枢疲労の発現条件及び中枢疲労耐性への影響を検証する。
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Causes of Carryover |
本年度は、他大学の研究者の協力により、実験を他大学施設を利用して進めることができたた。そのため、当初の本年度予算額より使用額を抑えることができた。しかし、今後は脳領域の測定だけではなく、全身運動中の生理学的指標の測定が必要となる。そのため、本年度の残金は測定機器の購入等に使用することとなる。
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