2018 Fiscal Year Research-status Report
運動が糖尿病性微小血管障害を改善するメカニズムの解明
Project/Area Number |
18K10882
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
曽野部 崇 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (70548289)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 運動 / 糖尿病 / 血管造影 / 超音波血流測定 / 微小血管障害 / Exercise / Angiography / Exercise hyperemia |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,糖尿病患者においては末梢血管の拡張機能が低下することが,運動耐容能の低下,ひいてはQOL低下の一因であるという考えのもと,1)末梢血管のどの部位が,どのように機能低下しているのか,2)どの血管拡張因子(NO,PGI2,EDHなど)が影響を受けているのか,また,3)それらは慢性的な運動習慣によってどのように改善されるのかについて明らかにすることを目的としている.
本年度は,正常Wistarラットにおいて,一過性の骨格筋収縮に対する血管拡張応答(運動性充血)をin vivoで評価するために以下の実験を行った. まず,麻酔下のラットに対して血管造影剤注入用カテーテルを大腿動脈内に留置し,低倍率から高倍率までズームの倍率を変えて下肢骨格筋の微小血管造影を行ったところ,安静時において,大腿動脈本管から約20~30 μmの細動脈まで連続的に,同一画像上に描写することができた.次に,麻酔下ラットの坐骨神経を露出し,電気刺激によって下肢骨格筋の強縮を負荷した直後に血管造影を行ったところ,動脈から細動脈までのほぼ全ての血管において顕著な血管拡張応答が観察され,安静時には見られなかった無数の細動脈が観察された.このとき,大腿動脈周囲に超音波血流プローブを留置することで筋収縮前後における大腿動脈血流を連続的に測定し,同時に動脈圧も測定した.これにより,筋収縮のような動的な刺激に対して,連続画像による血管径の変化に加えて血流・血管抵抗の変化をin vivoで同時に解析可能な実験系を確立した.
本手法は,アセチルコリンなどの薬理学的な血管拡張応答を基本としたこれまでの微小血管機能評価法に加えて,より生体の活動に近い環境下での血管応答を捉えることができるものであり,今後,糖尿病病態下における末梢血管が,運動刺激に対してどのような因子を介して応答しているかを明らかにしていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度においては,ラボ型X線装置を用いた麻酔下ラット下肢微小血管造影と,当初の研究計画にはなかった,超音波血流計を用いた対象脚における大腿動脈血流の同時測定を試みた.さらには,対象脚に対して電気的に筋収縮を誘発し,下肢骨格筋の動員に伴う血流変化・微小血管応答を同時に測定する実験系を確立することができた.しかしながら,年度初頭(2018年6月)に発生した大阪府北部地震の影響により,本研究において必須であるラボ型X線装置の修理・更新が必要となったため,当初の研究計画より遅延が生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では,これまでに用いてきたアセチルコリン(血管拡張物質)の静脈内投与による血管拡張機能評価を中心として実験を進める方針であったが,予備検討として行った運動刺激に伴う血管拡張機能評価において良好な応答が得られたため,本年度において確立した手法を優先的に用いて今後の実験を行う.また,運動刺激に対する内因性血管拡張物質の寄与を評価するために,NO・PGI2・EDHなどに対応する阻害剤の全身性投与後に血管造影を行う.そこで得られた正常ラットにおける基礎データをもとにして,糖尿病モデルラットを対象にして同様の実験を行う.さらに,2年目である2019年度は,血管拡張機能に対する運動トレーニングの効果に着目した実験に着手する予定である.
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Causes of Carryover |
年度初頭に発生した大阪府北部地震の影響を受けて研究計画が全体的に遅延している.この理由により当初の計画では初年度に着手予定だった実験を一部次年度以降に持ち越しているため,次年度使用額が生じた. 次年度には,持ち越し予定の実験で用いる糖尿病モデルラット(Goto-Kakizakiラット)の購入費・実験に必要な試薬(阻害剤等)の購入費を中心として研究費を計上する.同様に,初年度には組み込まなかった国際学会(Experimental Biology, USA)の参加費を計上する予定である.
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