2019 Fiscal Year Research-status Report
A study on kinesthetic aftereffects induced by a weighted bat on baseball batting performance
Project/Area Number |
18K10887
|
Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
兄井 彰 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20258560)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 野球 / 打撃 / 筋運動感覚残効 / スイング速度 / ボールを打つイメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
即時的なパフォーマンスの向上と運動遂行にとって好ましい感覚を得るために、通常よりも重い用具で準備運動を行うスポーツがいくつか見られる。その典型が、野球の打撃である。打席に入る前に重いバットを振る打者を試合などで頻繁に見ることができる。この重いバットを素振りする準備運動は、野球のパフォーマンスや運動遂行時の感覚にどのような効果や影響を及ぼすのであろう。 昨年度は、重いバットを素振りする準備運動を行うことで、どの程度バットが軽く振りやすく感じるかを特定するため、精神物理学の手法で測定した。 今年度は、バットが軽く感じられる筋運動感覚残効がバットのスイング速度に及ぼす影響について検討した。特に、野球の打撃の課題特性を考慮して、バットを出来る限り速く振るフルスイング条件とボールを打つことをイメージしながら振る打撃イメージ条件を設定した。 実験では、参加者に標準の重さのバットでスイング速度を測定する基準運動を行わせ、その後、3つ(900g、1050g、1200g)のいずれかの重さのバットで素振りする先行運動を行わせた。そして、準備運動後のスイング速度を測定する後続運動を行わせた。この基準運動と後続運動の時のバットのスイング速度をバットの振り方の条件別に比較を行った。その結果、フルスイング条件では、バットのスイング速度に有意差はみられなかった。しかし、打撃イメージ条件では、有意差がみられ、1200gのバットで素振りをした直後にバットのスイング速度が高い値を示した。 このことから、重いバットを素振りする準備運動で生じるバットが軽く感じる筋運動感覚残効は、ボールを打つイメージでバット振ると、スイング速度が高まることが明らかとなった。しかし、できるだけ速くバットを振る条件では、筋運動感覚残効はスイング速度に影響を及ぼさないと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、重いバットを素振りする準備運動で生じるバットが軽く感じる筋運動感覚残効の大きさを特定した。また、この筋運動感覚残効がバットのスイング速度に及ぼす影響を検討して、ボールを打つイメージでバットを振ると、筋運動感覚残効は、スイング速度を高めるように影響することを確認した。 さらに、重いバットを素振りする準備運動で生じる筋運動感覚残効が、実際に投げられたボールを打つ実打におけるパフォーマンスに及ぼす影響を検討するための実験について、予備実験を実施して、実験方法などの細かい点も確認することができた。 これらのことから計画通り、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度に明らかにした重いバットを素振りする準備運動で生じる筋運動感覚残効がスイング速度に及ぼす影響が、実際に投げられたボールを打つ実打のパフォーマンスに及ぼす影響について検討する。野球の打撃は、できるだけ速くバットを振り、ボールを時間的かつ時間的に正確に打撃することが求められるため、難しい運動課題である。この打撃の課題特性のため、パフォーマンスの評価基準が確立していない。そこで、簡易的ではなるが、ビデオカメラで撮影された打撃動作について評価を行う基準を設定した。この打撃パフォーマンスを評価する基準は、“打球の質”、“インパクトの質”、“スイングの質”の3つを設定して、野球の専門家による他者評価を行う準備を進めている。 また、重いバットを素振りする準備運動で生じる筋運動感覚残効が実打のパフォーマンスに及ぼす影響を検討するために、実際にピッチングマシンで投げられたボールを打つ課題で実験を行う。その際、投げられたボールの球速によっても筋運動感覚残効の影響が異なると考えられるため、遅めの球速(105km/h)と速めの球速(120km/h)を設定する。この両球速における基準運動と後続運動における打撃パフォーマンスを比較して、筋運動感覚残効の影響を特定する。実験参加者は、今年度の実験と同じ硬式野球の経験が10年以上の20名を予定している。細かい実験条件については、これまでの結果に基づいて決定する。これによって、これまで具体的に検討されていなかった バットが軽く感じる筋運動感覚残効が投げられたボールを打つ実打に及ぼす影響を確認する。これらのことが実施できれば、統一的に重いバットを素振りする準備運動で生じる筋運動感覚残効が打撃パフォーマンスに及ぼす影響が明らかにできると考えられる。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた実験参加者の了解を得て、人件費を全く使用しなかったことと、既に作成済みのバットを実験で使用したためにバットを購入するための消耗品費を使用しなかったことから次年次使用額が生じた。この次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせて、仙台大学で開催される日本スポーツ心理学会及び鹿屋体育大学で開催される九州スポーツ心理学会で成果発表を行うための旅費として使用する計画である。
|
Research Products
(1 results)