2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of the bone mass maintenance method by the electricity stimulation in the sports external injury rehabilitation period and elucidation of the mechanism
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18K10899
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大迫 正文 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (60152104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 俊一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80187400)
中井 真悟 常葉大学, 健康プロデュース学部, 助教 (10825540)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラット大腿骨 / 加重低減 / 経皮通電刺激 / 介入頻度 / 組織構造 / 骨吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの実験によって、経皮通電刺激が加重低減ラット大腿骨の骨量維持に有効であることが認められた。しかし、この方法の臨床応用を考えると、1週間あたりの頻度について検討することが必要となる。そのため、2020年度は将来的な臨床応用を視野に入れ、異なる介入頻度の経皮通電刺激が後肢懸垂ラット大腿骨の骨の強度および構造にもたらす影響を観察することにより、至適介入頻度について検討することを目的とした。 7週齢の雄性ラット64匹を用い,それらを後肢懸垂群(HS)、後肢懸垂・経皮通電刺激群(TE)および対照群(CO)に分類した。さらに,TEは介入頻度の違いから,週に1回(TE1)、3回(TE3)および6回(TE6)の群に分類した。HSおよびTEはケージ内で2週間後肢懸垂し、TEには 大腿前面から経皮的に通電刺激を10分/日,2週間行った。実験期間終了後,各群から大腿骨を摘出し、骨強度の測定および組織学的分析を行った。 骨強度はHSおよびTEがCOより有意に低値を示し、TEは介入頻度依存的に上昇して、TE6はHSより有意に高かった。大腿骨骨幹中央部の水平断で皮質骨前方部の骨膜面を見ると、HSおよびTE1では多くの吸収窩が認められたが、TE3およびTE6では骨が新たに形成されていた。これらのことから、ラット後肢懸垂によって大腿骨の海綿骨には骨量減少が生じるが、それは週に3回以上の経皮通電刺激によって抑制されることが示唆された。 スポーツ選手では、損傷後のリハビリ期間中に筋力と同時に骨量も低下するが、迅速かつ安全な競技復帰を目指すために、それらの強化しておくことが重要である。しかし、その期間には運動が制限されるため、運動を行わずに通電刺激による骨量維持が大きな意味をもつ。また、その期間の加療の頻度も重要な要素であり、本研究の結果は毎日行わなくても週に3日で有効な結果が得られることを示唆し、これは損傷したアスリートの負担軽減に繋がるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究に着手する以前に、骨膜まで鍼灸針を刺入した通電刺激法により、それが骨量維持に有効であることをすでに認めていたが、この方法には特殊な資格が必要とされるため一般化するのは困難であった。一方、経皮的な通電には資格は必要とされないが、鍼通電と同様の従来型装置を用いると、骨膜まで刺激が届かなかった。これらのことが、アスリートによる骨量維持のための経皮通電刺激法の活用の障壁となっていた。 その後、搬送波を用いて深部まで刺激が伝えることが可能な新型の装置が開発された。そのため、本研究は従来型装置による鍼通電と、新型装置による経皮通電の効果の比較から始まった。その結果、後者でも鍼通電に匹敵する効果が得られることが認められた。次に、筋の厚い部位(大腿前面)と薄い部位(下腿前面)のような異なる部位での経皮通電刺激の効果について比較検討した。この実験では少なくともラットの下肢では、両部位への効果には有意な違いが認められず、新型装置の有効性が確認された。そして、2020年度の実験では毎日通電しなくても、3日/週で骨量維持が図れるという結果が得られた。 その介入頻度に関する実験では、コロナ禍によりしばらくの間、大学への入構禁止状態となって実験ができなくなり、予定していた分析項目のすべてを行うことができなかった。具体的には、骨強度測定やリゴラック樹脂包埋研磨標本を用いた分析はできているが、走査電子顕微鏡による微細な構造に及ぼす影響や、免疫染色による解析もできていないのが現状である。それらの解析データは本研究の大きな目的である機序の解明に繋がるもので、目的を果たすためにはぜひとも必要なものである。このようなことから、2021年度にはそれらの実験を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では鍼灸針を用いた通電刺激と、パッドを用いた通電刺激を行った。それらに用いた刺激装置は異なり、前者は従来型の刺激装置により実施し、通電刺激の条件は:交流、幅250μsec、50Hz、0.24mArmsであった。また、後者は新型の刺激装置によって行われ、刺激条件は直流、電圧60V、周波数50Hz、200μsecであり、さらに周波数80kHzの搬送波を用いていた。本研究では、臨床応用を視野に入れて、通電刺激の異なる介入頻度が骨量維持に及ぼす影響について検討してきたが、そのほかに通電刺激の周波数、電圧の違いも結果に影響するものと思われる。また、従来型の刺激装置では、刺激が皮下の軟組織に阻まれて骨にまで到達できないことがあるために、本研究では直流の電気に高周波の搬送波を合わせて出力できる新型装置を用いてきた。しかし、この搬送波の周波数を変えることにより、深部への到達度も変化する可能性がある。 新型装置には直流の電圧、周波数を変えることができ、また、搬送波の周波数も同様である。そのため、今後はより効果的な骨量維持効果を検証するために、それらを変えて検討していく。
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Causes of Carryover |
昨年度はコロナ禍により大学への入構禁止状態となり、しばらくの間実験ができず、その後も同様の影響でフルに研究活動ができなかった。そのため、計画していた分析項目のうちほぼ半分はできているが、未だ実施できていない項目がある。その中には走査電子顕微鏡による骨の微細構造に及ぼす影響や、免疫染色による解析がある。それらは本研究の主要な目的の一つである経皮通電刺激の機序解明に繋がるもので、目的を果たすためにはぜひとも必要なものである。このようなことから、次年度にはそれらの実験を行いたいと考えている。
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