2018 Fiscal Year Research-status Report
精神保健と学校適応の向上を目指す大学生向け精神保健教育プログラムの開発
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18K10921
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大島 紀人 東京大学, 学生相談ネットワーク本部, 講師 (70401106)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 健康教育 / 精神保健 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学生を対象とした精神保健教育プログラム開発を目的に本研究を実施した。 ①大学生の精神保健学習状況とその効果の検証::大学生対象のアンケート(n=539)により、高校までの保健学習状況を調査した。心身の発育・発達(87.8%)、救急処置(79.6%)、生活習慣(73.4%)について良好な学習成果が示唆される一方、医療の適正利用(30.9%)等については乏しい成果が示唆された。比較的学習成果が良好であった生活習慣について、詳細に調べると、規則的な睡眠、バランス良い食事などで「できていない」と自己評価する学生が多かった。これに対し、睡眠時間や食事の量については比較的良好な結果であったことから、単に食事、睡眠の問題を教えるのではなく、実生活に根ざした、より具体的な生活習慣の課題について学習を進めることが大切であることが示唆された。 ②精神不調、学校不適応に関連する要因の分析:大学生の不安・抑うつの傾向について調査し、症状ならびにその解決に関連する因子として、help seeking(相談行動)との関係について解析を行った。大学入学前に相談歴のある学生の方が、ない学生よりも不安・抑うつ傾向を示す割合が有意に大きかった(オッズ比2.5, 95%信頼区間1.7 - 3.6)。入学時に不安・抑うつ傾向を示した学生に注目すると、相談歴がある学生の方が、ない学生よりも入学後に学生相談機関につながる頻度は有意に高かった(オッズ比10.2, 95%信頼区間5.8 - 18.0)。学童期の相談経験は、大学進学後のhelp seekingを促進することが示唆され、相談スキルの学習や相談の体験学習は、精神状態を良好に維持することに寄与すると考えられた。 ③成果発表:上記成果について、関連学会で成果発表するとともに、小中高の教員研修会等で報告することで、保健教育について教育現場で考える資料を提供できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い予定通り研究を進めることができた。 大学生を対象とした精神保健学習に関するアンケート調査では、予定のデータ数を収集することができ、解析、成果を得ることができた。大学生の精神不調等に関する実態調査では、計画されたデータ収集を行い、統計解析のためのデータ整理と記述統計による解析を行った。加えて、大学生で最も重要な(頻度が多く、学生生活に影響する)不安・抑うつに焦点をあててデータ解析を行い、前記のとおり成果を得た。 本研究は、医学、教育両分野を横断する知見と実践により、大学生の健康実現という成果を得ることが目標となっており、計画通り、医学、教育学両分野で成果発表を行った。 本研究の成果は、文部科学省が掲げる、「現代的健康課題」をかかえる児童・生徒の支援に資する内容であることから、小中高の教員研修会等で報告する機会を得た。保健教育について教育現場で考える資料を提供できたことは、予定にない研究成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進捗しており、当初の研究計画通りに遂行する。 ①大学生向け精神保健教育プログラムの作成:初年度の研究成果を活用し、大学生向け精神保健教育プログラムを作成する。特に1)心身の健康の基礎となる生活習慣について、大学入学前の学習成果が十分でない、2)不安抑うつなどメンタル不調を抱える大学生の割合は入学時点ですでに多い、3)メンタル不調への重要な対処である相談行動をとったことがない学生は在学中の不調時に相談行動をとらない、といった新たな知見を反映する。作成するプログラムは直ちに講義として実践できるように、まず大規模講義形式100分程度(授業1コマ分)で作成する。 ②教育プログラムの効果測定法の開発:精神保健教育の目的を考慮したうえで、本プログラムの特徴である、1)メンタルヘルスに有効な生活習慣の育成、2)精神疾患の知識まで踏みこんだメンタルヘルス素養の育成を評価できる効果測定法を開発する。 ③研究成果の発表:開発した精神保健教育プログラムの普及を図るため、大学保健関連の学会で成果発表する。同時に、他大学でも開発プログラムの活用を試みるため、講義で採用可能な大学を募る。本研究が医療、教育両分野にわたる研究である特性を踏まえて、医療分野の学会での研究成果発表もあわせて行う。
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Causes of Carryover |
研究発表を行う学会開催地の事情により、旅費が若干予定額を下回った。 次年度も研究発表を予定しており、翌年度分とあわせて支出する。
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Research Products
(3 results)