2018 Fiscal Year Research-status Report
小学生の体育授業におけるモデル動作を取り入れた教材開発-器械体操を例にして-
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18K10927
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
清水 悠 島根大学, 学術研究院人間科学系, 助教 (80752154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 翔一 秋田大学, 教育文化学部, 講師 (00806177)
西村 三郎 平成国際大学, 法学部, 講師 (00792201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 体育科教育 / バイオメカニクス / 動作分析 / 器械体操 / 標準動作モデル / ICT機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の体育授業では,ICT機器の普及により,これまで以上に即時的・客観的に自身の動作を観察する機会が増えている.しかし,小学校は教科専任制ではないため「適切な動きであるかどうか判断すること」や「どのように動作を改善していくかを示すこと」は多くの体育授業者を悩ます点である.このような問題に対し,本研究では,独自に「目標となるモデル動作」や「課題パターン別のモデル動作」を構築し,学習者に良い動きの着眼点や躓きやすいポイントなどを視覚的なイメージとして伝えることができる新たな体育教材を提案する.本研究では,学習者の習熟度が「成功」と「失敗」という結果で現れやすい「器械体操」を事例的に取り上げ,モデル動作を取り入れた体育授業の有用性について,バイオメカニクス的な観点から検証することを目的としている. 初年度では,共同研究者とビデオ会議を全6回実施するとともに,島根大学で会議を全2回実施し,研究・実験計画について議論した.また,島根大学の倫理委員会に研究計画書を申請し,承認された上で地域クラブ(全8名)と島根県内の小学校(全60名)で,器械体操(マットと鉄棒種目)の基礎的・基本的な技の「成功動作」と「失敗動作」を撮影した.さらに,予備実験として実際の体育授業内で「ICT機器」や「目標となるお手本動作」を用いた体育授業を実践した.その結果,器械体操を専門としない体育指導者であっても,形成的授業評価アンケートの結果,器械体操を専門とする体育指導者と同等以上の学習効果を児童に提供できる可能性が示唆された.今後は,動作の習熟過程などをバイオメカニクス的に論証していく. 今年度の年次計画は,対象となる技の動作データを収集・分析することをメインとしていた.研究成果を発表するまでには至らなかったが,概ね順調に遂行している.来年度は,動作データの処理や研究成果の発表に従事していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度(1年目)の計画案では,器械体操(マット,鉄棒,跳び箱種目)において小学校段階で身に付けておくべき技の「成功動作」を収集し,目標とすべき理想的なモデル動作を構築する予定であった. 実際の今年度(1年目)の進捗状況は,まずデータを収集するために,①共同研究者との研究打ち合わせ(全8回),②研究倫理申請,③データ収集を実施する組織への協力申請などを実施した.その後,島根県内の体操クラブ(全8名)と島根県内の小学校に在籍する小学生5年生の2クラス(全60名)のマットと鉄棒種目の基礎的・基本的な技を対象に,「成功動作」と「失敗動作」を収集することができた. 現在は,収集したデータの分析途中である.全てのデータの分析が完了次第,モデル動作の構築作業へ移行していく.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の次年度(2年目)の計画案では,小学校児童を対象に,対象となる技の「失敗動作」を収集するとともに,「成功動作」から作成した目標とすべきモデル動作と比較し,失敗動作の特徴を明らかにすることを予定していた. しかし,今年度(1年目)に「成功動作」とともに「失敗動作」についてもデータを収集することができた.そのため,来年度(2年目)は引き続き,データ分析を実施して,①「成功動作」から目標とすべき理想的なモデル動作を構築する,②「失敗試技」の特徴を分類し,学習者の動作を制限している要因(躓きやすいポイント)を明らかにしていく.そして,得られた①,②の研究成果をまとめ,国内外の学会で発表するとともに,学術誌への投稿を進めていく. さらに,3年目は,これまでの研究成果で得られた知見をもとに,「モデル動作による動作の着眼点」と「ICT機器などによる自己観察」を併用することで学習者の動作を即時的・客観的に比較させ,自身の課題点を自発的に気づかせる体育授業の実践を実施することを計画しているため,体育指導で有益な知見を整理していく.
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Causes of Carryover |
当初の計画案では,直接経費の内訳を物品費130万円,旅費30万円,人件費10万円に設定していた.実際の使用額をみると,物品費96万円,旅費30万円,人件費12万円であった.当初の設備備品費には,フルHD遅延操作装置(4-Assist社,約30万円)を購入予定であったが,予備実験や試行錯誤の結果,Webカメラと大型モニターを用いて,体育授業でも十分利用可能な遅延再生システムを新たに構築することができた.そのため,フルHD遅延操作装置の購入予算分(約30万円)が,次年度使用額(B-A)へ計上された. 次年度は,データ分析用のPC,ソフトウエア,モデル動作を視覚的に指導現場へ提供するためのICT機器などの購入に使用していく予定である.
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