2020 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代上州における馬庭念流剣術の普及・定着と免許・階梯制度に関する研究
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18K10934
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
数馬 広二 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (30204407)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 馬庭念流 / 世話役 / 目代 / 破門 / 免許 / 奉納額 / 近藤登之助 / 剣道師 樋口十郎右衛門 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸時代に上野国を中心に武蔵国、信濃国、江戸市中へと普及し現在まで群馬県高崎市吉井町馬庭の樋口家で400年以上継承される馬庭念流に注目し、その普及と定着の仕組みを「世話役人制度の導入」、「破門などによる門人の統制」、「免許の完全相伝制による門人の拡大」という視点で捉え、江戸時代の厳しい身分統制下に農民でありながら剣術流派を継続することができた仕組みを明らかにすることを目的としている。2020年度は新型コロナウィルス感染症対策下において、十分な調査ができなかったものの、樋口家資料および松本家資料の翻刻を中心に研究を行うことができた。すなわち、馬庭念流は17世紀初頭に馬庭村で松本家の支えを受けながら樋口頼次が友松偽庵の「念流正法兵法未来記」を継承したのち、上野国での地盤形成をし、七日市藩前田家や小幡藩松平家などへ出入りすることをきっかけに江戸進出を果たしたのではないかという仮説を立てるところまで検討ができた。翻刻を試みた文書は(1)江戸道場・山川弥之助の破門(2)近藤登助ら旗本門人の起請文および樋口家文書『當家先祖覚書』(3)寛政3年2月「起請文前書(樋口十郎右衛門 十郎兵衛から樋口英翁へ)」(4)寛政8年3月「英翁病中御見舞受納帳」(5)嘉永2年3月『稽古場開贄納帳(江戸神田明神下出張)(6)伊藤多仲の上覧一件など。また、18世紀半ば以降に老中・松平定信や江戸の旗本と樋口定暠(英翁)が関係を強くしたことの端緒が、天明時代の江戸打ちこわしなどにあった可能性がある。そして明治3年3月(1870年)の『當年宗門人別取調書上帳(上野国多胡郡馬庭村)』(松本孝義家文書)には「剣道師 樋口十郎右衛門」の記述があり、江戸時代幕末期まで樋口家が公的に幕府から認められた剣術指導者であったことも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウィルス感染症対策により他県への移動を自粛することとなり、樋口家文書および松本家資料の翻刻を中心に作業を進めた。しかしながら、群馬県、埼玉県への調査を十分出来なかった。奉納額を保管している神社への調査も十分出来なかったため、免許門人の道場(田部井源兵衛道場や本間仙五郎道場)や江戸出張道場などを含む馬庭念流全体の門人の階梯制度について明らかにできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、宗家(樋口家)以外の免許者、すなわち、田部井源兵衛の道場や本間仙五郎道場の門人の免許、階梯のしくみをあきらかにする。そのために、馬庭念流奉納額のうち磨滅して見えにくい①埼玉県比企郡ときがわ町・慈光寺②群馬県太田市新田木崎町・大通寺(木崎村金比羅権現神社)弘化2(1845年)年③世良田村天王宮・八坂神社(尾島町世良田)の撮影と解読を行いたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウィルス感染症対策における他県への移動を自粛することとなり、奉納額を保存している神社への調査の回数が出来なかった。今年度は、宗家(樋口家)以外の免許者、すなわち、田部井源兵衛の道場や本間仙五郎道場の門人の免許、階梯のしくみをあきらかにする。そのために、馬庭念流奉納額のうち磨滅して見えにくい額、たとえば①埼玉県比企郡ときがわ町・慈光寺②群馬県太田市新田木崎町・大通寺(木崎村金比羅権現神社)③世良田村天王宮・八坂神社(尾島町世良田)などの撮影と解読を行う予定である。
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