2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on the Diffusion and Establishment of Maniwa Nenryu Kenjutsu school in Jyoshu during the Edo Period and the Licensing and Grading System
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18K10934
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
数馬 広二 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (30204407)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 馬庭念流 / 友松儀庵 / 彦根藩 / 念流正法兵法未来記 / 虎之巻 / 象巻 / 龍巻 / 扇之巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題である「江戸時代上州における馬庭念流剣術の普及・定着と免許・階梯制度に関する研究」について、本年度は江戸時代の馬庭念流の免許・階梯制度の由来を彦根藩での念流との比較を試みた。その結果、つぎのことがわかった。 1.彦根藩で友松偽庵(兵庫頭氏明、氏宗)が弘めた「念流正法兵法未来記」の文書数点が彦根城博物館に保管されている。「念流正法兵法未来記」文書群の稽古道具に着目すると『虎之巻』では小剣図、『象巻』で矛と戟の図、『龍巻』では長刀の図が描かれている。上野国馬庭念流樋口家文書では『虎之巻』では小太刀、『象巻』で鑓銘とあり長刀、突棒、扠首又、『龍巻』では長刀が道具として記されている。すなわち、稽古に使用した道具に相違があるものの、総合武術として矛、戟、長刀など多種の武具を用いた点では上野国に普及した念流と共通していたと考えられ、従って、彦根藩藩士に広まった念流の階梯制度を馬庭念流でも行っていたとみることができる。 2.『扇之巻』は馬庭念流には存在せず、「過去・現在・未来」の記述が5箇所に確認できる。「過去・現在・未来」は身体の使いかた(ここでは「沈身、浮身、猪身、左足、右足」など)、太刀の部位、相手との拍子などとともに記されているので、時(とき)が技法と関わる記述であると考えてよいのではないだろうか。 3.井伊家文書『訓閲集』(軍艦見當)の写本巻末に「念流未来兵法者 友松兵庫氏明」の署名がある。兵法者友松偽庵はまさに『訓閲集』などの兵法書を学んでいた。馬庭念流が小笠原流兵法をどの程度、取り入れていたかは新たな課題となった。
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