2018 Fiscal Year Research-status Report
小学生におけるスピードスケートカーブ滑走動作の技術的特徴
Project/Area Number |
18K10940
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Research Institution | Japan Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
湯田 淳 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (80415835)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スピードスケート / カーブ滑走動作 / 発育発達 / 3次元画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,小学生におけるスピードスケートカーブ滑走動作を3次元画像解析法によってキネマティクス的に分析し,カーブ滑走における技術的特徴を技能レベル向上の様相と関連づけて検討することによって,技能レベルに応じた児童への滑走技術の指導に役立つ基礎的知見を得ることであった. この目的を達成するため,平成30年度では,スピードスケートが盛んな地域である北海道帯広市周辺における小学校4~6年生男女計98名を被験者とし,スピードスケートカーブ滑走動作の測定を行った.測定では,3次元計測範囲を400m室内リンクのカーブに設定し,3台の高速度ビデオカメラを用いて側方,前方および後方より撮影を行った.試技は公益財団法人日本スケート連盟公認シングルトラック(インレーンのみの滑走)での500m全力滑走とし,最大スピード到達後のカーブ区間(およそ350m付近)における画像を収集した. スピードスケートにおけるカーブ滑走での独特の動きである両脚の交差(「クロスオーバー」動作)は技術的難易度の高い動作であり,その習得へ向けての発育発達期での滑走技術の指導法が現場において模索されている.しかし,初心者としてスピードスケート滑走を経験することの多い児童期におけるカーブ滑走動作の実態は,未だ学術的に明らかにされていない.本研究では,公益財団法人日本スケート連盟が認定するバッジテスト(競技距離ごとに設定されたタイムをクリアすることによってバッジテスト級が段階的に認定される)を活用し,被験者を男女それぞれ技能レベルでグループ化した後,技能レベルに応じてカーブ滑走動作の習熟過程を検討する.本研究は,スピードスケートにおける発育発達期での技術指導を効果的に進めるために意義があるといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,実験試技(500m全力滑走)のゴールタイムを基に,児童期後半に相当する小学校4~6年生が標準的に取得できると考えられるバッジテストB~E級までの4カテゴリーを設定し,これらのカテゴリーに分類された被験者グループ間の滑走動作の相違を比較することが目指された.実験場所は,天候の影響を受けない400m室内リンクで実施するため明治北海道十勝オーバル(北海道帯広市)とし,被験者となる小学生からの多くの協力が得られる日時を調整し,実験が行われた.最終的な被験者数(収集したデータ数)は,小学校4~6年生男女計98名であり,当初予定よりは多少減ったものの,グループ間比較を行ううえで十分な数であった. 3次元画像解析法では,複数台のカメラから得られた画像を用いて3次元座標を算出し,様々なバイオメカニクス的パラメータを検討していく.ここで,撮影によって得られた映像から座標を算出するための作業としてデジタイズ(画像上の分析点をマウスで読み取っていく作業)が挙げられ,これは多くの時間を要する作業である.平成30年度では,実験によって得られた映像を整理し,今後,全身およびスケートブレード端点の3次元座標を算出するための準備を進めた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の実験によって得られた98名の被験者のデジタイズを行い,カーブ滑走動作の3次元座標データを算出するには多くの時間が必要となる.今年度は,計画的な作業スケジュールを設定し,このデジタイズ作業を中心に分析を進める予定である. また,本研究で対象とする小学生のカーブ滑走動作に関する研究はほとんどなく,滑走動作の特徴を検討するための知見は不足している.動作に関連するバイオメカニクス的パラメータを効果的に選別するためにも,小学生への指導現場の実態を十分に把握する必要がある.また,発育発達期における動作の変容について,関連する研究を改めて確認する必要もあり,今後,これらの調査も並行して進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
本研究に参加した被験者は,小学4~6年生男女スピードスケート選手98名であり,男女計120名としていた当初の計画通りにデータを収集することができなかった.検討の結果,この被験者数によって発育発達の観点から分析を進めることが十分可能と判断されたため,追加実験を行うことなく,データ収集を完了することとした.このため,被験者への謝金として見込んでいた経費が当初計画ほどかからなかった. また,実験場所の確保が順調に進み,当初予定していた実験実施へ向けた現地での撮影準備を効率よく行えることとなり,検者の旅費削減に繋がった. 今後,データ分析を進めるうえで,指導現場の実態や発育発達に関する最新の研究動向についての調査が必要とされるため,平成30年度における残額はこれらの経費に使用する予定である.
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