2022 Fiscal Year Research-status Report
思春期男子の加速能力評価システム開発と身長成長を考慮した中長期のトレーニング効果
Project/Area Number |
18K10946
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Research Institution | Japan Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
星川 佳広 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (60394095)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スプリント / 思春期スパート / Peak height velocity / ステップ長 / ピッチ / ジュニアアスリート |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度と同様にコロナ禍の継続により2022年度においても新規の測定は実施できず、当初計画していた同一人物の身長成長と20m走タイム(加速能力)、ステップ長などの縦断的追跡は分析対象者を増やすことができなかった。しかし代案として2021年度より、コロナ禍以前に測定済みの対象者に対して、本研究課題前の小学生時の身長記録の取得、整理作業をすすめ、2022年度はそれを踏まえ各対象者ごとに身長成長のピーク(PHV)を妥当に同定することができた。その結果に基づき、身長成長が急激な思春期の中学生にあって、20m走タイム、垂直跳高の結果向上が暦年齢よりもMaturity offset(PHVまでもしくはPHVからの期間)により強く影響を受けることを明白に示すことができ、論文化した(星川ほか,J.Exer.Sci.,2022)。また、その過程で中学生サッカー選手においては一般男子の成長と異なり、体重増加(除脂肪量増加)が両測定に正の効果をもたらすことを示すことができた。 さらには、上記整理作業を踏まえ、日本人中学生男子対象に、一時点の形態計測からMaturity offset を妥当に推測する式を提案できた(中馬・星川,トレーニング科学,2022)。これは海外で利用されるMaturity offset推測式の研究(Mirwald,et al.,2002)を、上記の日本人データによって再検討したものであるが、一時点の形態計測から思春期の加速能力に強く影響するPHV年齢を日本人のデータに基づき推測できるため、本研究課題である “思春期男子の加速能力評価システム”を利用する点において、将来的に有用性を高めるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、同一人物の身長変化と加速能力、およびステップ長、ピッチの変化の縦断追跡については中断せざるを得なくなったが、代案として取り組んだ対象者の過去(小学生時)の身長変化のデータ取得と整理が奏功し、暦年齢ではなく成熟の程度を基準として思春期男子の加速能力の向上を検討できるようになった。その成果の一部は論文発表まで至ることができ、研究課題遂行の遅れを挽回できつつあると考えている。現在は、思春期男子の個人の特性に応じた加速能力向上のトレーニングの方向性が提案できるよう、成熟の程度を考慮した加速能力の評価基準の作成と、身長成長段階(Maturity offsetを利用)と、ステップ長、ピッチ変化と加速能力向上の関係性について分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ステップ長、ピッチの変化についての分析を進め、論文化を図る。PHVを基準にして成熟によるタイム短縮に対して、ステップ長、ピッチがどのように変化するかをまとめる視点、思春期におけるタイム短縮の大きい群とそうでない群でステップ長、ピッチの変化の傾向に差異があるかの視点、加速能力の高い男子におけるステップ長、ピッチの縦断変化の特徴をまとめる視点などを考えている。それらにより本研究課題で作成する成熟を考慮した20m走タイムの評価基準に、ステップ長、ピッチの情報を加味し、中1時点での特性(成熟度、身長、ステップ型、ピッチ型など)を反映したスプリントトレーニングを可能にする。 また、コロナ禍が落ち着いたため現場での測定の再開を模索する。再開が可能であれば、一時点の形態計測からMaturity offset を妥当に推測する式の妥当性について、他の集団における検証を行いたい。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナ禍により測定を実施しなかったため、人件費・謝金を使用しなかった。学会は東京開催のものに参加し旅費が不要であった。2023年度の使用計画としては、測定機器の一部追加、最終身長を予測するAuxalソフトや分析の多様化のための統計ソフトの購入、および論文作成にかかる費用(PC、プリンタ環境の改善、トナー代、英文校正、投稿費等)への使用を予定する。
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