2019 Fiscal Year Research-status Report
引き込み現象を利用した幼児のタイミング能力獲得支援法の開発
Project/Area Number |
18K10948
|
Research Institution | Kobe Shinwa Women's University |
Principal Investigator |
杉山 真人 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (00442400)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 幼児 / 空間的制限 / 捕捉行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究課題ではターゲットの速度が低速の条件ほど,被験者はターゲットに近接しながら移動する傾向が示唆された.これを踏まえ今年度はこの低速で移動する条件に焦点を絞り,被験者が移動する空間の制限の有無及び移動開始地点の違いが,幼児の捕捉行為の方略に与える影響を明らかにすることを目的とした. 課題や被験者の年齢は昨年度の研究課題と同様であった.被験者はまず,課題遂行中の移動の範囲に制限が設けられていない条件(以後,制限なし条件とする)と制限が設けられている条件(以後,制限あり条件とする)に割り当てられた.移動開始地点を5条件(0°,22.5°,45°,67.5°,90°)設け角度条件とした.これは,ターゲット-ターゲットの到達地点-被験者の移動開始地点が成す角度を示している.各角度条件ではそれぞれの角度を有する位置から被験者の移動が開始される.制限あり条件では,被験者の移動開始地点から到達地点までの通路(全長3.9m)の左右の端(幅40cm)にビニール製のロープが設置され,移動はこの通路内に制限された.制限なし条件では課題遂行中は自由に移動することが可能であった.そして,ターゲットと被験者の移動完了の間の誤差(恒常誤差)と被験者の移動距離について両条件で比較した. 恒常誤差に関しては,制限あり条件の方が制限なし条件よりも尚早な反応を示した.そしてその傾向は角度が小さい条件(0°,22.5°)よりも90°において顕著であった.移動距離に関しては,制限なし条件が制限あり条件よりも距離が増大する傾向を示した.そして90°よりも0°でその傾向が顕著であった.従って,ターゲットとの距離を小さくし,空間の自由な移動を利用することによってタイミングを制御していると考えられる. 以上から,角度が小さい条件の方が大きい条件よりも空間的制限の影響が小さく,捕捉行為の難易度は低くなることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では,低速で移動するターゲットの捕捉行為課題中の幼児の移動に焦点を絞り,空間的な制限を設ける条件と設けない条件について,複数の異なる移動開始地点から課題を行わせる実験を計画し,これを予定通り実行することができた.また,データ分析等も順調に進んでいるため.
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度の実験データをさらに分析し,月齢などの比較を行い発達的な傾向等について検討する予定である.次に,当該年度の実験から,小さい角度条件の方が課題を遂行しやすいと考えられる.また,これまではプロジェクターに投射された等速で移動する刺激を提示して捕捉行為課題を行わせていた.しかし,実際の運動場面ではターゲットが等速で移動する事態はほとんどないため,幼児が行う運動遊びなどを想定した実験を行う必要がある.以上から,これまで得られた知見を検証するために,ボールを移動させそれを捕球する実験課題を実施する.そして,小さい角度条件の方が大きい角度条件よりも優れた捕捉を行うことができるかを検証する予定である.また,広く自然科学で取り上げられる引き込み現象やその他,幼児の運動と環境との相互作用の観点からも検討する予定である.そして,最終的に幼児が十分にタイミングを発揮することができる環境やそのための支援方法についての提案を試みる.
|
Research Products
(1 results)