2018 Fiscal Year Research-status Report
特別支援学校(知的障害)における体育授業の現状及び充実に向けた実証的研究
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18K10951
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
村井 敬太郎 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, インクルーシブ教育システム推進センター, 主任研究員 (10755987)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 特別支援学校(知的障害) / 体育授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
特別支援学校(知的障害)における体育授業の研究は、児童生徒の運動技能向上のための支援方法や授業改善の方法などを中心に少しずつ取り組まれているものの、非常に少ないのが現状であり、よりよい体育授業を構築していくための科学的な裏づけを伴う研究・教育活動の積み重ねが必要不可欠である。そこで、本研究では特別支援学校(知的障害)における体育授業について、教育課程上の位置づけや授業内容の実際、体育授業に対する教員の意識や考え方といった体育授業の現状を詳細に明らかにするとともに、知的障害のある生徒自身が現在取り組んでいる体育授業にどのような意識や考え方、要望などを持っているのかも明らかにする。そして、これらを通して、今後の体育授業の充実のための方策を検討し、特別支援学校(知的障害)に具体的に提言することを目的に実施している。 平成30年度は、本研究の第1研究として全国の特別支援学校(知的障害)842校(分校、分教室、高等特別支援学校を含む)の小学部から高等部を対象に郵送による自記式質問紙調査を実施し、学校(学部)規模や体育授業の教育課程上の位置づけ、指導内容の実際、児童生徒の実態把握の方法、指導目標と指導内容の設定、学習評価、学習内容、体育授業の位置づけといった観点から体育授業の現状に関する情報を収集している。質問紙調査の回収率は小学部が583学部中384学部(65.9%)、中学部が596学部中395学部(66.3%)、高等部(高等特別支援学校を含む)が745学部中480学部(64.4%)である。 現在、体育授業の教育課程上の位置づけや授業内容の実際と、各学部、学部規模などといった属性との関係において、体育授業の教育課程上の位置づけや授業内容の実際にどのような違いがあるのかを分析しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の第1研究において、先行研究が非常に少ないことから質問項目の抽出が予想よりも難しく、質問用紙の作成に多くの時間を費やしてしまった。さらに、作成した質問用紙について体育授業担当教員に予備調査を行ったところ、質問内容や質問項目数などに多くの変更が生じてしまい、質問用紙を全体的に見直すこととなった。これらの作業の遅れから本調査に取り組むことができたのは平成31年2月上旬となり、質問用紙の回収が平成31年3月末となってしまった。さらに、できるだけ多くの回答を得るために回答期限以降にも各学校に呼びかけたことから、質問用紙の回収も大幅に遅くなってしまった。また、質問紙の回答データ集計のための業者委託予算を計上していなかったことから自分でデータ集計を行うこととなり、大量のデータであることから集計作業にも非常に手間取ってしまった。 研究開始当初は、本研究の第1研究の遂行に必要な時間をかけることができると考え、平成30年度内に第1研究を終える計画であったが、予想以上に勤務先の業務が多忙となったことで第1研究の遂行のために設定した時間を業務に回さざるをえなくなり、研究実施計画通りに取り組むことが難しい状況となってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、本研究の第1研究である、特別支援学校(知的障害)の体育授業の教育課程上の位置づけや授業内容の実際といった体育授業の現状調査に取り組んでいる。現在、質問紙調査を終了して回答結果の集計と分析を行っているところである。第1研究の研究実施計画では、当初、質問紙調査の他に面接調査を予定していたが、第2研究以降との研究実施計画及び勤務先の業務との関係で日程的に学校に訪問することが難しいことから、面接調査を行わずに質問紙調査の結果のみを詳細に分析して研究報告をまとめたいと考えている。 令和元年度は、本研究の第2研究として特別支援学校(知的障害)の体育授業に対する教員の意識構造とその影響要因について明らかにする計画である。山梨県を中心に首都圏において調査協力を得られた特別支援学校(知的障害)の管理職、養護教諭、栄養教諭を除く全教員を対象に質問紙調査を行い、教員の体育授業に対する意識や考え方を明らかにするとともに、教員経験年数や所属学部といった教員の属性についても調査する。そして、統計的検定により教員の体育授業に対する意識や考え方から教員の体育授業に関する意識構造を明らかにし、明らかになった教員の体育授業に関する意識構造と教員経験年数や所属学部、年齢などの教員の属性との関係を分析することで、教員の属性によって体育授業に関する意識構造に影響や違いがあるかを検証する計画である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は学校訪問調査および授業見学の機会を設定することが日程的に困難であったことから、当初、計画していたデジタル機器や体育関係文献などの物品を購入したり、特別支援学校(知的障害)に訪問したりすることが少なくなってしまった。令和元年度は特別支援学校(知的障害)の教員を対象とした体育授業に対する意識調査の実施に伴い、デジタル機器及び体育関係文献の購入、特別支援学校(知的障害)の体育授業の見学、体育科の関連学会における情報収集などを行う必要があることから、より多くの必要物品の購入費及び旅費の使用を計画している。
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