2019 Fiscal Year Research-status Report
特別支援学校(知的障害)における体育授業の現状及び充実に向けた実証的研究
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18K10951
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
村井 敬太郎 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 研修事業部, 主任研究員 (10755987)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 特別支援学校(知的障害) / 体育授業 / 困難さ |
Outline of Annual Research Achievements |
A県内の国公立特別支援学校(知的障害)の管理職、養護教諭、栄養教諭、実習助手を除く全教員468人程度を対象に質問紙調査を実施し、体育授業に対する教員の困難さの意識構造を明らかにするとともに、教員の属性によって体育授業の困難さの意識構造に影響や違いがあるかを検討した。 まず、体育授業に対する教員の意識構造を調べるために、「子どもの実態把握」「指導内容の設定」「子どもへの支援」「学習評価」「授業改善」「チームティーチング」「学習環境」「専門性」「体育授業の位置づけ」の9カテゴリー45項目の調査用紙を作成し、「とても難しい」「やや難しい」「あまり難しくない」「難しくない」の四件法で回答を得た。次に因子分析により教員の意識構造を5因子抽出した。そして、教員の属性として設定した「特別支援学校(知的障害)教員経験年数」「所属学部」「特別支援学校教諭免許状所有の有無」との関係を明らかにするために、各因子でt検定または一元配置分散分析を行い、一元配置分散分析で有意差がある場合は多重比較を行った。 その結果、教員の意識構造として「因子1:体育授業の指導計画作成と子どもへの支援」「因子2:体育授業の学習評価と授業改善」「因子3:チームティーチングによる体育授業」「因子4:体育授業の専門性」「因子5:体育授業への積極的取組」を得た。特別支援学校(知的障害)教員経験年数及び所属学部による違いを見るために一元配置分散分析を行った結果、所属学部で違いはなかったが、特別支援学校(知的障害)教員経験年数では因子3を除く4因子に有意差が見られ、多重比較の結果、いずれの項目も経験年数1年~5年未満が困難さを抱えていた。特別支援学校教諭免許状所有の有無による違いを見るためにt検定を行った結果、因子1と因子2に有意差が見られ、いずれも免許無が困難さを抱えていた。 今後はこの結果を踏まえ、考察と今後の課題をまとめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A県内の国公立特別支援学校(知的障害)7校の管理職、養護教諭、栄養教諭、実習助手を除く全教員468人に郵送による自記式質問紙調査法によるアンケート調査を実施した。344人から回答を得て(回収率73.5%)、調査用紙への回答に欠損のない287人(有効回答率61.3%)を分析対象とした。現在、データ収集およびデータ入力、データ分析が終了し、因子分析により5因子を抽出して教員の体育授業に対する困難さの意識構造を明らかにすることができた。また、特別支援学校(知的障害)教員経験年数及び所属学部、特別支援学校教諭免許状の有無といった教員の属性により意識構造に違いや影響があるかを見るために、各因子で一元配置分散分析またはt検定を行った。その結果、所属学部で違いはなかったが、特別支援学校(知的障害)教員経験年数と特別支援学校教諭免許状の有無において違いが見られ、教員の属性による体育授業の困難さの影響や関係を明らかにすることができた。 以上のことから、本研究は現時点においておおむね順調に進展している考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題意識や問題意識、先行研究との違いを確認し、学術上及び実践上の研究的意義を再度確認する。本研究は先行研究が少ないことから、特別支援学校(知的障害)における体育授業に関する研究だけでなく、小学校や中学校、高等学校における体育授業に関する先行研究も概観することで、幅広い視野から考察と今後の課題をまとめることができるように十分に準備を行う。 これらを踏まえ、今後は質問紙調査から得られたデータと先行研究を基に考察と今後の課題をまとめ、学術論文としての体裁を整えて令和2年度中に体育関連の学会誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度は研究最終年度となることから、研究成果報告書を作成し、研究にご協力くださった全国の国公私立特別支援学校(知的障害)862校に配布する予定である。このことから研究成果報告書の印刷代と郵送代などが必要となるため、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用したいと考えている。
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