2019 Fiscal Year Research-status Report
健康持続の「からだ気づき」のレジリエンスプログラムの開発
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18K10957
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Research Institution | Shizuoka Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 和子 静岡産業大学, 経営学部(磐田), 教授 (10114000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 光 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (00293168)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | からだ気づき / レジリエンス / 健康維持 / 健康調査 / プログラム開発 / ダンス上演 / マインドフルネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、他者とのかかわりを大事にし、生涯にわたり健康的で活動的な生活を持続的に実現する為の「からだ気づき」のレジリエンス(生きる力)プログラム開発が目的である。2019年度の研究実績は下記の通りである。 ①「からだ気づき」の基盤である身体論研究では、昭和・平成・令和を生きたモダンダンスの振付家正田千鶴(1930- )に作品創作や指導の原理をインタビューすると共に、本研究者によるダンス上演にまで繋げる事ができた。更に富山の「風の盆」やフィンランドの振付家テロ・サーリネン氏の指導を直接受け、ダンス指導の本質に触れることができた。 ②プログラム開発(教材精選・実施と効果測定・社会発信)では、ダンス未熟練大学生の鑑賞力の実態把握と、高齢者への「からだ気づき」実践(健康調査含む)を行った。ダンス鑑賞力では、全国4連勝を達成したY大学の生の上演を5年分調査した結果、審査員と学生の作品評価は一致し、特に「生き生きとした生命力あふれる表現」の評価が高い傾向にあった。Y大学は自主的・対話的に作品を創作し、生身のからだから発する息遣いや迫力を実感させた事も明らかになった。これらの視点はレジリエンスプログラム開発上、参考になる視点と言える。高齢者への「からだ気づき(健康調査:ロコモーティブシンドローム・ヘモグロビン値・骨密度含む)」実践の結果、対象者は実年齢よりも健康度合いが高く、身心への気づきを日常生活に活かす意識の高さが伺えた。この事は「受講者の行動変容:生活習慣での健康改善調査」(研究④)にも通底する観点であった。 上記の①②④とも日本体育学会で発表すると共に、査読論文として発刊した。 また、研究分担者は、著書の「論文やレポートにまとめる」項目の中で、「レジリエンスを高める”からだ気づき”の有効性に関する研究」を対象に執筆・発刊しており、研究成果をまとまった形で社会発信することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマは「健康維持のからだ気づきのレジリエンスプログラム開発」である。その解明の為に、①身体論研究、②プログラム開発、③指導者の教師行動分析、④受講者の行動変容等の観点から明らかにしようとしている。2018-2020年の研究計画のうち、2019年度の進捗状況は下記の通りである。 ①「からだ気づき」の基盤になっている身体論研究においては、日本のパイオニア達を対象にした2018年度の研究を継続して、舞踊家正田千鶴を対象にした。その結果、学習指導要領作成協力者達(片岡康子・松本富子・村田芳子・高橋和子)の学生時代に大きな影響を与えた事や、新しい創造への道を切り開いた事が明らかになった。また、富山の「風の盆」調査では澤聡美連携研究者(富山大学)に、振付家テロ・サーリネン氏の通訳には横国大留学生の通訳者Milka Hekkinenに支援頂き、研究が進展した。②プログラム開発では多様な実践の場(学生・教員・看護師・高齢者)において検証できた為、当初の計画以上に成果がみられた。③指導者(本研究者)の教師行動分析は、連携研究者(吉田美和子・澤聡美・原田純子・村川治彦・藤田美智子)達から、教師行動(本研究者自身)のフィードバック研究を行うことができた。④「受講者の行動変容:生活習慣での健康改善調査」においては、当初の予定にはなかったが、小澤治夫連携研究者から500万円もする高額健康機器を借用でき、データー収集ができた。その結果、日頃から運動を実施している方々は年齢にかかわらず、健康度合いが高く、けがや病気を回避する行動が醸成されていることが分かった。なお、数か月後に生活習慣等の行動変容調査を実施する予定であったが、新型コロナウェルスの影響があり、実施することはできなかった。 以上のことを総合的に評価すると、研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では「研究の進捗状況」にも掲げた、①身体論研究、②プログラム開発、③指導者の教師行動分析、④受講者の行動変容の4点から、テーマを明らかにしようとしている。 2020年度は継続して、①身体論研究を「舞踊家正田千鶴における舞踊観や指導方略」について、既に実施したインタビューと様々な作品資料を参考にしながらまとめると共に、90歳になっても創作活動を継続する正田の営みからレジリエンスに繋がるポイントを探る。②プログラム開発は、これまで「からだ気づき」や即興的表現を体験してこなかった大学生に対して実施し、未経験者の傾向を明らかにする。S大学には2020年度から開講される科目「からだ気づき」がある為、データ入手が可能になる。③指導者の教師行動分析については、主に本研究者と一緒にワークショップなどを行っている連携研究者である指導者を対象にして、アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)に繋がる指導法に焦点を当て、言葉かけや指導者自身のからだの在り方と、受講者の感想等の分析から検証する。④受講者の行動変容については、対象者をしぼり、実習体験後の数か月後に測定できるようにする。また、30・40歳代の看護関係者の貧血度合いを知るヘモグロビン値が正常値よりも低い女性がいる事から、自身のマインドフルネスに乗っ取った生活改善(運動継続による健康度合いの変化)についても検証する。これは、科研申請時には計画していない視点である。 さらに、吉田美和子連携研究者(上智大学准教授)が米国や中東地域に、ボディワークの研究に行かれる為、最新の情報を入手する予定である。また、2018年、2019年と同様、web発信を積極的に行うと共に、新型コロナウィルスの影響もあり、直接的な体験指導ができない場合、web発信がどの程度可能なのかについての新たな課題にも取り組みたい。
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Causes of Carryover |
2018年4月から勤務している静岡産業大学においては、修士課程や博士課程がない為、データ入力が可能な学生などが探せず、2020年になってようやく該当者を探せた。また、2019年度に入ってすぐに、新学部である「スポーツ科学部」(仮称)開設準備のリーダーになり、研究に費やす時間が減った。さらに、2020年2月より、新型コロナウィルスの影響があり研究が滞った。以上のような理由により、海外調査等も行えず、当該年度に予定していた使用額を使い切ることができなかった。 2020年度は、国内外の「からだ気づき(ボディ・ワーク)」の実践者への聞き取りや「レジリエンス研究」の最前線を調査すると共に、国際学会での発表も含め研究のまとめを行う。その為の旅費やデータ分析、web機器購入やホームページへのアップの経費も必要になる。
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Remarks |
タイトル(1)(2)は、静岡産業大学学術機関レポジトリに掲載された論文である。 タイトル(3)は、「からだ気づき」のダンス領域において、世界的舞踏手である大野一雄(享年103歳)とその息子の慶人(享年81歳)へのオマージュ的ダンス作品を、本研究者が演じた動画である。特に大野一雄は綿密なダンス企画を立てた上で本番は即興を重んじており、長寿を全うした事で、レジリエンスに満ち溢れた典型的な人物であった。
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Research Products
(12 results)