2019 Fiscal Year Research-status Report
運動由来の静脈血管伸展性増大が持つ生理的意義の検討ー呼吸・循環応答への関与ー
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18K10974
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大上 安奈 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (00550104)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 静脈コンプライアンス / 血圧応答 / 静脈還流 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動トレーニングによる静脈血管伸展性の増大は,血管の構造変化(平滑筋や弾性線維の変化など)および機能性改善(自律神経系や内皮機能の向上など)に由来すると考えられている.一方で,静脈血管は血管壁が薄いため,血管の内圧・外圧の物理的な影響も受けやすく,これらはトレーニングを行わなくても変化する.例えば,下肢を圧迫するような弾性ストッキングを着用すると,血管外圧が高まり,血管内圧との差(経壁圧)が小さくなることで,静脈血管伸展性が増大する.そこで,本研究では,弾性ストッキング(GCS)を利用した運動トレーニングを伴わない静脈血管伸展性の増大が血圧応答に及ぼす影響を検討した.10名の健康な若年成人(男性7名,女性3名,20.9±0.9歳)を対象に,GCSを着用した状態と着用していない状態の2条件下において,予測最大心拍予備能(HRR)の30%および60%に相当するリカンベント自転車運動をそれぞれ5分間ずつ実施した.本研究で得られた結果は以下の通りである.GCSの着用により,下腿部静脈血管伸展性の増大が確認された.しかしながら,いずれの運動強度とも,運動時における平均動脈血圧および心拍数の変化は,GCS着用あり時と着用なし時で,有意な違いは認められなかった.差がみられなかった理由として,1)健康な若年者はGCSの着用がなくても十分な静脈還流を維持できていたこと,2)運動に伴う血管内圧の上昇がGCS着用に伴う血管外圧上昇を相殺したため,安静時で観察された静脈血管伸展性増大が運動時には見られなくなっていたこと,が考えられた.以上の結果から,健康な若年成人において,GCS着用に伴う下腿部静脈血管伸展性の増大は安静時および運動時の血圧応答に影響を及ぼさないことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験は全て完了していることから,本研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,縦断的な運動トレーニングを実施することで得られる血圧応答の適応に対する静脈血管伸展性増大の関与を検証し,これまでの研究成果と併せて,循環システムに対する運動由来の静脈血管伸展性増大が持つ生理的意義を明らかにする.
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Research Products
(6 results)