2019 Fiscal Year Research-status Report
熟練者の視線を繰り返し体感できるVR型サーフィン・トレーニングシステムの実現
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18K10977
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Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀越 力 湘南工科大学, 工学部, 教授 (00739782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 佳恵 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (90584441)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筋電センサ / 動作解析 / サーフィン / 身体的特徴 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、陸上用サーフボード(SureSet)を使用し、SurfSetの上で、筋電センサを下肢(大腿四頭筋、大腿二頭筋、下腿三頭筋、全脛骨筋)及び体幹(腹直筋、広背筋)に装着し、筋電を計測した。サーフボードに立ち上がる際に、どのタイミングで、どの筋が主導で動いているかを解析した結果、熟練者と未経験者では、筋肉の使い方に違いがあることが見えてきた。筋肉の活動状態を可視化するために、ゲーム開発ツール(Unity)を使ってシステム構築を行った。 筋電情報は、筋肉の活性化状態の情報のみであり、下肢の動きに関しての情報を持たない。そのため、膝の曲げ具合など動きに関する情報が必要になる。筋電センサに加え、モーションセンサを更に装着することは、サーファーの動作の妨げになる。そこで、筋電センサのみを使った3D骨格モデルの可視化手法を考案した。筋電センサの値から、下肢の3次元的な動きを推定する学習モデルをディープラーニングにより構築し、モーションセンサなしで、3次元的な動きを再現できる手法を実現した。これにより、腹筋/背筋及び下肢8カ所に筋肉モデルを配置した骨格モデルの3Dアニメーションを筋電センサの値だけで再現可能となった。また各部位の筋電の値に応じて、筋肉モデルの色を変えることで筋肉の活性化状態をわかりやすく可視化することができるようになった。 また、サーファーの身体的特徴の調査を行った。熟練者と未経験者の静的・動的平衡機能及び足趾筋力は有意な違いは認められなかったが、腰椎の彎曲角度に違いがあることがわかった。この結果から、サーファーが腰痛の一因でもある腰椎変形を引き起こし、サーフィンの運動能力低下となる可能性が示唆された。今後、平衡能力及びそれに関する筋力データを解析し、サーファーに要求される運動能力に関しての調査研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
360カメラの補正に関しては、スポーツの動作時のカメラ映像を安定化させる、いわゆるスタビライザーとしての機能が主である。ヘルメットに360カメラを取り付け、海上でのサーフィン時の360°映像を撮影したところ、サーフボードに立ち上がって、波に乗っている状態と、立ち上がる瞬間、ボードから落ちる瞬間等、映像の動きがかなり激しく、従来の補正技術では十分に対応できないことが明らかとなった。サーフィンでは、パドリング(ボードに寝ている状態)から立ち上がり、波に乗っている状態での頭部の向きというように、カメラの動きだけでは無く、体勢の動きによる映像の変化が大きい。そのため、サーフィン特有の身体の動きに合わせた補正が必要である。そこで、360°補正に関しては、サーフィン時の動作解析を十分に実施した後に取り組むこととした。 また、筋電センサは、装着者の動作を妨げないことを主眼に、ワイヤレスセンサを用いている。センサが不安定のため、同時に12カ所の計測が困難であった。そのため、繰り返し計測が多く、当初予定の数倍の計測時間を要してしまった。また個人差のばらつきのみならず、計測ノイズがかなり激しく、そのノイズ処理の方法を検証する時間が必要となり、計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
筋電センサのみから、被験者の3次元的な動きを、骨格モデルで表現する基本的な仕組みは昨年度実現した。今年度は、異なる被験者で筋肉の使い方を比較できるようにするために、筋電計測データを正規化処理する必要がある。その正規化データを使って、動きの推定を行うための学習モデルを改めて構築する必要がある。また、動作のタイミングも被験者毎にバラバラであるため、動作開始のタイミングを合わせる工夫を考える。 熟練者、未経験者の比較に関しては、被験者の視線データも重要な要素と考え、視線検出測定を追加していく予定である。身体的特徴の違いに関しても、頸椎彎曲度合い、平衡能力及びそれに関する筋力データを解析し、違いを明らかにする。 そして、熟練者と未経験者の実際のサーフィン時のデータを計測し、これら計測データの解析・可視化を通して、トレーニングに必要となる項目を明確化していく。これらの結果を随時学会発表していく。国際会議を予定しているが、新型コロナウィルスの影響で開催延期等になった場合は、国内学会に切り替え、国際論文誌への投稿を行うこととしたい。
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Causes of Carryover |
使用額が異なる主な理由は、研究計画変更による。1つは、360°カメラ映像の撮影をした結果、サーフィンの動きの特徴を知ることを優先事項としたためである。サーフィンの一連の動きを考慮した画像解析、データ解析、3Dモデル化が必要と考え、これらの解析を主眼に研究を進めてきた。2つめは、開発システム構築時期の遅れである。これまでの検証結果を踏まえ、VRシステムの構築を今年度行う。VR関連機器を今年度購入することにしたことから、当初予算が今年度にずれ込んでいる。
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