2018 Fiscal Year Research-status Report
幕末期における為政者の武芸実践および武芸政策にみる武芸思想に関する文献学的研究
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18K10979
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
菊本 智之 常葉大学, 健康プロデュース学部, 教授 (70267847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幕末期 / 為政者 / 武芸実践 / 武芸政策 / 武芸思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世の武芸について考えていくには、社会を主導する幕閣や藩主などの為政者が、どのような武芸観をもって武芸を実践し、どのような武芸思想に至って社会を主導したのかを明らかにしていくことが必要である。本研究は、内憂外患の幕末期に海防を意識しながらも伝統的な武芸の必要性を認め、その存在が失われなかった背景には、為政者にどのような意図があり、その背景にはどのような武芸思想や政治思想があったのかを明らかにすることで、近世武芸の新しい諸相を見出し、近代武芸へとつながる幕末期の武芸実態を明らかにしていくことが目的である。 松平定信以降、幕末にかけて、久松松平家は老中、若年寄、奏者番、寺社奉行などの幕閣を輩出している。久松松平家では、軍事力としての砲術など近代化を目指した武芸とあわせて、いわゆる近世以来伝承されてきた伝統的な武芸が実践されていた。その武芸の在り方は、幕閣を務めた為政者の武芸思想やそれに基づいた武芸政策に少なからず影響を及ぼしているものと推察できる。さらに幕末の久松松平家桑名藩主は松平定敬であり、会津藩主松平容保とは実の兄弟であり、幕末最後まで佐幕派を通した両藩である。平成30年度は、このような関係性も視野に入れながら、主に史料蒐集とその整理、資料の解読作業などを行った。神戸大学図書館には、起倒流の関係史料を確認するとともに、会津藩関係の資料にもあたることができ、また国立国会図書館でも幕末最後の老中首座である久松松平家出身の板倉勝静関係の資料にもあたることができ、平成30年度に予定していた史料蒐集の一部を実行することができた。幕末の為政者も行った起倒流については、その道統の発展過程において重要な役割を果たしている堀田佐五右衛門頼庸について、これまでの研究成果をまとめ、第51回日本武道学会(東京学芸大学)において「起倒流 堀田佐五右衛門頼庸に関する一考察」と題して発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の視点から史料蒐集を行うにあたって、幕末の会津藩武芸関係史料や松平容保自身の武芸修行や武芸実践の史料、備中松山藩主板倉勝静の武芸実践に関する直接的な史料が未だなかなか発掘されないことがその大きな理由である。他の幕閣や他の藩主との関係など、調査範囲を拡大していく必要があるかもしれない。これに関連して、「幕末の四賢侯」と呼ばれる山内容堂、島津斉彬、松平春嶽、伊達宗城などの武芸実践や武芸思想などについても調査研究していく必要が出てきている。これらの事前調査、周辺の先行研究や調査準備にもかなりの時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画にそって、平成30年度に引き続き令和元年度は、松平定信につながる松平定永(桑名藩主)、板倉勝静(老中首座)、土よ頼之(若年寄)、松平近説(若年寄)、松平定敬(桑名藩主・京都所司代)に関連する史料調査を進めていく予定である。また、松平定敬の実兄である会津藩主松平容保(京都守護職)の調査も併せて進めていく計画である。令和元年度は、これらの史料蒐集とともに、史料の解読、整理、分析、検討、考察なども進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
史料蒐集において、調査に赴く回数が2回しか実施できず、また、調査場所も神戸と東京であり、旅費にかかる経費が少なかった。次年度は、会津、岡山、高知などの調査も行うことも予想され、また、解読や専門的知識の提供を受けた際の謝金の発生なども見込まれるため、これらに使用することを計画している。
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Research Products
(1 results)