2019 Fiscal Year Research-status Report
幕末期における為政者の武芸実践および武芸政策にみる武芸思想に関する文献学的研究
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18K10979
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
菊本 智之 常葉大学, 健康プロデュース学部, 教授 (70267847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幕末 / 鈴木家 / 起倒流柔道 / 聖徳太子流 / 会津藩 / 桑名藩 / 為政者 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度末(2019年3月)から新たな資料「鈴木家神武傳 秘傳之巻・神秘之巻 口上極意」の解読を進め、4月の新年度当初からは、資料内容の検討、分析、考察などを積極的に進めた。これまでの研究成果との関係の中から、この資料の意味付けを確認し、幕末期の為政者が重視し、実践していった武芸の要諦の一側面を明らかにする成果につながった。 この資料については、近世後期から末期にかけて、幕府の要職や藩主であった為政者行った流派である起倒流柔道(鈴木清兵衛系)の伝書であるが、資料の保存状態から、「鈴木家 神武傳」が「聖徳太子流軍要秘傳之巻口上極意」と「聖徳太子流軍要神秘之巻口上極意」ということになる。聖徳太子流は会津藩で藩の流派として隆盛したことが知られているが、幕末期、会津藩主松平容保と桑名藩主松平定敬は実の兄弟で、一橋(徳川)慶喜と「一会桑」と呼ばれ、最後まで幕府側の人間として行動をともにした関係である。桑名藩で親子を通じて継承した起倒流柔道を松代藩主に入ってからも藩主に継承していった起倒流の秘伝が会津藩の武芸流派の秘伝と隠れたところで繋がり、共通する武芸思想や武芸観を共有したり交流した可能性が窺える成果となった。この成果については、日本武道学会第52回大会(令和元年9月5日)で発表を行った。また、“Martial arts practice and its thought in Japanese early modern government official" と題して、2019 International Conference on Sport,Leisure and Festival で近世為政者の武芸実践、武芸思想、武芸観の視点から、幕末期に引き継がれた武芸政策と武芸思想の関係について発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
幕末期の資料は、散逸しているものや幕末の混乱で焼失しているものも多く、新たな新資料の発掘は難しくなっている。特に会津藩の資料は、公的なものがまとまって残っている一方、武芸関係資料などは限定的にしか残っていない。これらの史料蒐集には、予定より大幅な遅れを余儀なくされている。また、本務の状況から、資料収集にかけるまとまった出張計画が立てづらく、現場へ赴く調査、研究も計画から大幅に遅れている。これらの状況が重なり、予定していた研究計画についても大幅に遅れが生じている。 今年度は年度末にかけて、新型コロナウィルス感染症拡大防止のために、研究に必要な県外への出張や活動も大幅に制限され、2月以降は、調査や解読の作業が中断された状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の収束の状況にもよるが、緊急事態宣言の解除の状況や新たな社会活動の様式を見ながら、それに合わせた新たな研究環境の整備を進め、研究室や出張による調査研究を補う研究方法を具体的に再検証していく必要がある。また、研究計画の遅れを取り戻すために、より効率の良い資料の整理、解読、分析作業の方法を考えていきたい。オンライン授業などへの対応で研究上もこれらのツールの活用により、研究環境が向上できる可能性を感じているが、実際、所有している物品やツールは非常に粗末なもので、研究に資する環境には程遠い。パソコンの整備や通信環境を研究に資するよう改善を図ることも検討中である。
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Causes of Carryover |
前年度より繰り越した金額、加えて物品購入する予定であったものを購入できなかったこと、また、調査、研究などに使用する計画であった旅費が使われなかったことが、残額の多い理由である。 新型コロナウィルス感染症が収束し、調査、研究が再開できるようになった暁には、新たな対策を講じながら、遅れている調査研究を再開し、研究の推進を図る予定である。 また、能力的・機能的に古いパソコンで研究を進めているので、研究計画どおりパソコンの購入も行う予定である。
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