2018 Fiscal Year Research-status Report
スポーツの文化的意義を学ぶ体育理論の授業モデル-民俗フットボールを教材として-
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18K10980
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 文久 日本福祉大学, スポーツ科学部, 教授 (30191571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 民俗フットボールの存続 / スポーツの主体者像 / 体育理論の現状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中学校及び高校の体育理論に設定された「スポーツの文化的意義」に関する単元の学習の教材として民俗フットボールを位置づけ、その授業を構想し、実践モデルを提案することであった。そして、実施初年度の本年度は、現在体育理論の授業がどのように展開され、前回の学習指導要領で必修化されたことが現場教師の体育理論の授業づくりにどのように浸透しているかを確認し、また、教材として取り上げようとするカークウォールのゲームの再調査(可能ならばアッシュボーンのゲームも)を実施することとしていた。 体育理論の授業の実施状況は、本務校及び非常勤先の体育専攻学生にアンケートを実施し、体育理論の必修化の実施以降、10年が経ってもそれが浸透していないこと、しかし、一方で学生たちが有意義と受け止める授業が少ないながらも実践されていることが確認できた。また現場教師の面談から、同じ学校の中でも体育科教員の意識の差が大きく、未だに雨降り体育として体育理論が実施され、また体育理論の授業に関心を示さない教員も少なくないことが確認できた。 一方、カークウォールのゲームの教材研究の作業は、2018年9月に現地を訪問し、これまでのゲームの存続の担い手として功績を残してきた数名の人物にインタビューを実施し、貴重な情報を得ることができた。カークウォールには何度か訪問しているが、今回ほど詳細かつ体系的にゲームに関する質問をしたことはなく、大変協力的に、そして丁寧に応答してくれたことで、地元住民の民俗フットボールを存続させてきた苦労や工夫、住民たちの強い伝統継承の意識を確認することもできた。スポーツの文化的意義を学ぶ授業を構想する上で、スポーツの変革、創造の主体者をイメージするための貴重な姿を示してくれていると受け止められ、本研究にとって重要な意義ある作業となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
体育理論の授業の必修化の実施状況は予想していたとはいえ、思ったより現場には浸透しておらず、体育教師の自覚の問題といえる一方で、それには現場教師の授業づくりに向けた情報不足や資料不足が影響していることを知ることができた。よって、本研究の意義は大きく、その要請に応えていかなければならないという思いを強くした。 その意味から、今回カークウォールで実施したインタビューの成果は重要であり、当初アッシュボーンへの調査も予定していたが、今年度はそれを控えカークウォールのゲームの整理に時間を費やした。本研究に取り組む段階では、カークウォールに加えてアッシュボーン他で現在も行われている民俗フットボールも教材として含めようと考えていたが、カークウォールを典型例として教材化することの方が生徒の学びを焦点化すると判断し、カークウォールのゲームを詳細に分析することにした。本年度は、授業を構想する前段階の作業と位置づけて取り組み、特に教材研究の視点からは予想以上の成果を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
民俗フットボールを教材とする「スポーツの文化的意義」を学ぶ体育理論の授業の実践者として数人の現場教師にあたり、中高それぞれ1名ずつ今後継続的に授業構想に向けた議論をしていく約束を取り付けることができた。ただ、学校の事情や授業への介入には慎重を要し、今後丁寧かつ慎重に取り組んでいきたい。また、実践者と綿密にやり取りをし、実践者自身が主体的に授業を計画・実施し、評価する取り組みにしていきたい。 また、カークウォールへはできれば再度訪問し、写真や映像による記録を行い、授業の教具として活用できればと考えている。そのために、初年度に購入予定をした設備備品を次年度初めに購入したい。なお、カークウォールのゲームについては、民俗誌の視点をもたせて論文化し、学会誌に投稿する準備に取り掛かっている。
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Causes of Carryover |
本年度の助成金の執行において、次年度に繰り越す額が生じたのは設備備品の購入を控えたからであった。当初、初年度にノートパソコンをはじめとする設備備品を購入する予定であったが、予定していた調査の実施時期が早まったこともあり、また構想した授業の模擬授業における活用や授業記録などのことを考え、計画時に機器の機種を提示していたが、改めてそれらの選定を少し慎重に行いたいと考えたからである。次年度に再びカークウォールへの訪問を考えており、それら設備備品は2019年度当初に購入の予定である。
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