2019 Fiscal Year Research-status Report
スポーツの文化的意義を学ぶ体育理論の授業モデル-民俗フットボールを教材として-
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18K10980
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 文久 日本福祉大学, スポーツ科学部, 教授 (30191571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 民俗フットボール / 体育理論 / スポーツの主体者 / スポーツの文化的意義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中学校及び高校の体育理論に設定された「スポーツの文化的意義」に関する単元の学習の教材として民俗フットボールを位置づけ、その授業を構想し、実践モデルを提案することであった。そして、初年度は、学校現場における体育理論の授業の実践について現状把握し、事例(教材)として考えているカークウォールに調査に出かけ、インタビューを行い、教材化のための情報収集を行った。そして、今年度はそれらの入手した情報を整理し、現場の体育教師と授業化に向けた打ち合わせを重ね、授業構想を立て、模擬的に実践することまでを視野に入れていた。また調査を行ったカークウォールのゲームを民族誌的に記述し、論文化することも課題としていた。 そのような計画を立て臨んだが、まず、授業構想の構築、模擬実践化については、予定していた教員の転勤や学校の事情により、具体的な授業構想、模擬実践化は難しく、構想の検討は行ったが、模擬的な実践としては筆者が大学において担当する教職科目「保健体育科教育法Ⅱ」の「体育理論」のなかで学生を対象に実施し、学生にも取り組ませた。そこでは、カークウォールでのインタビューを生かし、これまで撮影した写真でゲームのイメージを待たせようと試みたが、学生のこれまでのスポーツのイメージからは実際のゲームの姿の理解が難しいという声が出され、授業化のために求められるビジュアルによる的確な情報として、これまで収集してきたものでは不十分であることが明らかになった。そのことは予想されていたことから、今年度にカークウォールへの再調査を計画に入れており、実施することもできたが、博士論文の作成・提出の作業もあり、12月末に現地への調査は実施できなかった。 このように実践化に向けた十分な取り組みはできなかったが、カークウォールのゲームの論文化には取り組み、『年報人類学研究』に投稿し、3月に発行されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学校現場の「体育理論」の授業実践の必修化が謳われていながらも、それが浸透していないという現状を確認していたが、授業の模擬実践については、予定していた実践者の情況が変化したことで、授業の実施の協力を得ることが難しくなるということが起こった。個人的にはその意義を受け止め、実践に意欲を示してくれていたが、他の体育科教員の理解を得るまでには、ハードルがあることは確かである。そのようなことになる可能性を予測して取り組む必要性もあったと反省される。 大学で行った模擬授業は、スポーツ科学部の学生を対象としたものであり、スポーツ経験を一定程度もつ学生にとって、現在のスポーツにどっぷり浸かっていることで、こちらが提示した資料ではゲームの姿を受け止める想像力を働かせることができなかったようである。そのためにインパクトのある写真やビデオ映像が必要であると受け止められた。 年度後半は、博士論文「英国における民俗フットボールの人類学的研究-その変容の社会的背景と存続の現代的意義」への取り組みへの比重が大きくなり、研究の進展を遅らせたことは確かである。しかし、民族誌的に貴重な内容であり、博論のなかで中心的な位置づけをしている「カークウォールのBa'ゲームにみる民俗フットボールの意味の変容-伝統行事からコミュニティの統合の契機へ-」という論文を作成するなかで、ゲームについて検討を加え、今まで持ちえなかったゲームの理解を得ることができたことは、今後の本研究における授業づくり、その実践化にも十分生かされるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度取り組んだ研究の成果を生かして、改めて授業構想を策定する。そして、実践者の選定、確定し、中学校、高校での模擬授業を行い、授業モデルを提案するところまでに至りたい。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大によって、学校現場が落ち着くまでは、それを配慮した準備作業となり、現時点では、模擬授業などは後期以降のところで設定するという計画で進めていくしかない。また、カークウォールへの調査も9月に予定しているが、これもコロナウィルス問題が収束するかどうかが鍵となり、計画を後ろに設定せざるを得ない可能性が大きい。 いずれにせよ、フィールドでの研究活動は当面行えないことを踏まえ、当面は、授業構想をより洗練させ、スムーズに模擬授業を展開できるように準備しておきたい。一方で、実践者の選定、確定の作業も余裕を持たせて候補者を確保しておきたい。
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Causes of Carryover |
物品については、パソコンは安価なものを購入したこと、模擬授業の記録用のデジタルカメラ及び書籍の購入を控えたためである。旅費については、カークウォールへの調査が未実施のためであり、当初予定していた学会発表は、博士論文作成のために時間を費やしたことから、発表するまでには至らなかった。人件費については、模擬授業を実践することができなかったことから、協力要請した教員やアルバイト学生に予定していた謝礼も発生しなかった。 今年度は、模擬授業の実施によってに生じる費用を支出し、カークウォールへの調査、モデル授業を記録するための物品に充てたい。
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