2020 Fiscal Year Research-status Report
スポーツの文化的意義を学ぶ体育理論の授業モデル-民俗フットボールを教材として-
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18K10980
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 文久 日本福祉大学, スポーツ科学部, 教授 (30191571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体育理論 / 民俗フットボール / スポーツの文化的意義 / 授業モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中学校・高校の体育理論に設定された「スポーツの文化的意義」に関する単元の学習の教材として民俗フットボールを位置づけ、その授業を構想し、授業モデルを提案することを目的としている。最終年となる2020年度には、それまでに検討してきた授業構想の実践化として、中学校及び高校の体育理論の授業でその試案による実験的授業を行い、それを総括し、修正や改善を加えた授業モデルを作成し、提案するという計画であった。 しかし、予想もしなかったコロナ禍の影響によって、現場での授業ができない状況が続き、また予定していた実践者との協議もできない日々が続いた。学校の事情を優先せざるを得ず、中学校での授業者は確保できたが、高校の授業者は得られず、当初計画していた高校での民俗フットボールを教材にした授業の実施、モデル化を断念した。そのような中でも中学校では、学校の理解を得て、十分とは言えないが、構想した3つの単元のうち、何とか1つの単元(「運動やスポーツが心や社会性にあたえる効果」)の授業を2クラス(2年生)に実施することができた。実践は不十分であったが、授業構想の検討に時間を費やすことができ、中学校及び高校それぞれ3時間(単元)分の授業案を作成することができた。 本来は、中学3年生の「文化としてのスポーツの意義」、高校1年生の「スポーツの文化的特性や現代のスポーツの発展」の単元の授業構想をもとに授業を実施し、実践者、生徒から成果、課題を抽出し、モデル授業の提案につなげるはずであった。しかし、実践を承諾してくれた授業者が中学2年生の担当であったために、2020年度の実践は3年生に設定されている「文化としてのスポーツの意義」の単元に向けた予備的実践と位置づけ、実施することに計画変更した。 なお、2020 年度には9月にKirkwallへの再調査を予定していたが、これもコロナ禍によって実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、構想した授業を中学校及び高校で実践し、その再検討によって授業モデルを作成するという計画であった。しかしながら、年度初めからコロナ禍によって、予定していた計画どおりに研究が進まず、中学校での実施は引き受けてもらったものの、高校での実践は実施できず、中学校を対象にした授業モデルを作成することに軌道修正を図った。その中学校での実践もコロナ対策によっていろいろ制限があり、授業の実施は計画どおりに進めることができなかった。また、2020年度内に実践し、授業モデルを作成するためには、授業実施者が民俗フットボールのそのものの理解及び民俗フットボールの教材的価値について認識をするには時間を要し、授業の事前・事後の授業者との協議にはかなりの時間が必要であることに気づかされた。そこで、2020年度の実践は、3年生の「文化としてのスポーツの意義」の単元につなげる2年生の学びとする試行的実践として位置づけ、「文化としてのスポーツの意義」の単元の授業モデル作成に向けた授業は2021年度に実施することにし、研究助成期間を1年延長する手続きをとることにした。 そのようなことから、2020年度に授業モデルを構築するという当初の計画を変更せざるを得ず、よって研究の「遅れ」という評価に至った。しかしながら、十分な時間がとれないなかでも、授業者の協力によりZoomやメールを用いてやり取りし、また、2度ではあったが、模擬授業の様子を観察し、記録することができた。さらに、実践者が他の教員にも実践依頼をしてくれ、授業構想の検討材料を新たに加えることもできた。2020年は思うような研究に取り組むことができなかったものの、研究期間を延長したことで2021年度に改めて実践を行い、構想した授業案を検討、精査し、授業モデルを提示するという研究目的を達成したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に実践してくれた授業者が持ち上がり、3年生担当になったことから、コロナ禍が続くなかではあるが、その授業者と昨年までの筆者の同僚であった研究協力者によって夏休みに集中的に協議し、2学期に「文化としてのスポーツ意義」の単元の模擬授業を実施する。そのうえで、実施した授業について総括し、授業モデルを作成することにしたい。昨年度の教訓から、授業者には構想した授業を単に実践することに終わらず、その後も体育理論の授業づくりに取り組んでもらいたいとの願いから、筆者が構想した授業について実践前に十分検討し、また、民俗フットボールについての理解と体育理論の授業づくりについての理解を深める学習も併せて実施したいと考えている。またその一方で、民俗フットボールの教材とする「運動やスポーツの必要性と楽しさ」及び2020年度に実施した「運動やスポーツが心や社会性にあたえる効果」についての授業を実践してもらい、民俗フットボールの教材的価値についても検討したい。 そして、模擬授業を行うなかで、生徒に民俗フットボールを理解させるために、インパクトのある映像をコンパクトにまとめる必要があることがわかり、また、生徒から出された民俗フットボールに対する疑問に答える必要があることから、現地の住民の生の声を生徒に聞かせるために、英国での調査を実施する。当初、Kirkwall及びAshbourneのゲーム以外の情報収集のために英国に出かけることを計画していたが、授業者との協議によってKirkwallのゲームに限定した方がよいと判断し、計画変更してKirkwallに焦点化して調査することにしたい。 以上のような取り組みによって、2021年度は、中学校での体育理論における民俗フットボールを教材とする「文化としてのスポーツの意義」の授業モデルの提案、そして、民俗フットボールの教材的価値の検討を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍によって行動規制が求められたことから、研究計画の大幅な修正が求められた。そのために、研究目的であった授業モデルの作成・提案に至らなかったことで、成果の発表のために学会参加することができなかった。また、授業の映像資料の収集及び現地の人のインタビューに英国(Kirkwall)に出かけるための旅費や中学校で実施する授業記録を編集し、映像保存するためにかかる経費(人件費、編集費用など)も支出しなかった。 そこで、研究期間の1年延長が認められた2021年度は、英国への調査を実施し、得られた資料をもとに民俗フットボールの理解のための教材を整備し、授業を実践する。そして、その実践をくぐり検証をともなった授業モデルを2022年3月に開催されるスポーツ人類学会に研究成果を発表したいと考えている。そのために、関係する研究者との協議の場も設けたい。 よって、2021年度の助成金の使用計画としては、英国出張に関わる旅費、授業準備のために必要な費用(写真や映像を保存するファイルやそれらの印刷費等)、授業記録の編集・保存に関わる費用(人件費・謝金含む)・手数料、そして、学会発表、研究交流などの旅費等に充てたい。
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