2019 Fiscal Year Research-status Report
脂溶性食品成分による細胞膜ドメイン制御を介した上皮バリア機能強化の分子機構の解明
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18K10992
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松浦 達也 鳥取大学, 医学部, 教授 (00199746)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脂溶性食品成分 / 細胞膜ドメイン / 上皮バリア機能 / 細胞極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
培養上皮細胞であるMDCK細胞にCoQ10を処理しカルシウム依存的な接着構造の形成過程(カルシウムスイッチ法)に対する作用を検討した。その結果、CoQ10処理群では、コントロール群よりも早くタイトジャンクションが形成されることが明らかとなった。また、カルシウムスイッチにより形成されるタイトジャンクションに依存した上皮細胞層間の電気抵抗値においても、CoQ10処理によりその抵抗値の迅速な上昇が確認された。さらに、極性化した上皮細胞の膜ドメインに対するCoQ10の作用について検討を加えた。コレステロールを多く含むカベオラ構造に対する変化をGFP-カベオリン-1(Cav-1)およびAkt PHドメインにGFPを融合させたキメラタンパク質(GFP-PH)をMDCK細胞に発現させ検討した。その結果、CoQ10を処理した細胞では、GFP-Cav-1とGFP-Akt PHの形質膜への局在変化が観察された。極性制御因子であるatypical protein kinase C (aPKC)のキナーゼ活性は、上皮細胞の極性形成に必須である。CoQ10を処理したMDCK細胞では、aPKC活性に関わるスレオニンのリン酸化が上昇していた。また、aPKCの活性化に働く、PI3キナーゼシグナルの活性化も確認され、CoQ10によるaPKCの活性化にPI3キナーゼシグナル経路を介した制御が存在することが示唆された。 以上の結果より、CoQ10は上皮細胞の極性化を促進することが示唆された。その分子機構としては、aPKC活性化に働くPI3キナーゼシグナルの活性化を介したaPKC活性化によって上皮細胞の極性形成が促進されたと考えられた。このPI3キナーゼシグナルの活性化には、CoQ10によるカベオラ構造の形成促進が関わることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NBD-CoQを用いて外来性の脂溶性機能成分が細胞膜のどのドメインに存在するかを検討中であるが、試料や技術的な問題により、現在のところ明確な結果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
NBD結合脂溶性食品成分を添加して膜ドメイン変化と脱極性化に対する抑制効果(上皮バリア機能強化)を検討し、細胞における脂溶性食品成分の動態と上皮バリア機能強化の関係を明らかにしたい。
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