2021 Fiscal Year Annual Research Report
老人性低体温症モデルマウスを用いた骨格筋の新規熱産生メカニズムの解明
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18K10994
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中尾 玲子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (20582696)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱産生 / 概日リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアに発現するATPトランスポーターSLC25A25は、細胞内のエネルギー需要が高いときにその発現・活性が誘導されることから、SLC25A25によるATPの輸送は、ミトコンドリアに発現する酵素の活性を刺激しエネルギー代謝を急激に上昇させる意義があると考えられている。 我々は、絶食や高脂肪低糖質食摂取下のマウス骨格筋においてSlc25a25の発現が誘導されることを確認し、この分子が栄養飢餓状態におけるエネルギー代謝や体温の制御に何らかの役割を担うと考えた。骨格筋Slc25a25の発現はマウスの活動時間帯に著しく上昇することから、この分子の機能は活動時間帯に特に発揮されると仮定し、毎日の活動時間帯のみマウスを絶食させる時間制限給餌を行った。自由摂食時には野生型マウス、MKOマウスの体温や自発活動量に差は見られなかったが、絶食時間帯にはMKOマウスにおける体温・活動量の低下が野生型よりも顕著であった。令和3年度はこの個体から採取した臓器や血液の解析を行った。自由摂食下では骨格筋の重量に遺伝子型による差は見られなかったが、時間制限給餌によりMKOマウスにおいてのみ骨格筋重量が減少した。このとき、筋分解マーカーAtrogin-1やMurg1の遺伝子発現量は野生型マウスよりもMKOマウスにおいて高値を示し、血中アラニン量も増加していた。飢餓状態では体タンパク質だけでなく体内に蓄積した脂肪を代謝してエネルギーを得ようとするが、MKOマウスを飢餓状態に供するとエネルギー基質としてタンパク質への依存度が高まる可能性が示唆された。骨格筋Slc25a25は飢餓状態において、時刻を限定して脂肪代謝・体温上昇を誘発し、餌の探索のための活動を容易にする役割があり、Slc25a25の機能低下と栄養状態の悪化により筋タンパク質の喪失が亢進し、筋萎縮のリスクが増加する可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)